ヤミ金の実質年率は、「トイチ」と呼ばれるメジャーな悪徳業者で「実質年率3100%」。消費者金融の実質年率が「18%」なので、実に「172倍」の高金利です。
ここでは、ヤミ金の金利がどのくらいなのか、利息が実際そこまで膨れ上がっていくのか…などをまとめます。
まず、ヤミ金の種類から
ヤミ金の種類は、「どのくらいの利息を取るか」で分けると、下のようになります。
- トイチ…10日で1割
- トニ…10日で2割
- トサン…10日で3割
- トヨ…10日で4割
- トゴ…10日で5割
『闇金ウシジマくん』の主人公、丑嶋のカウカウファイナンスは、トゴですね。(ヤミ金の中でも、最高級に悪どい…ということです)
*その「極悪人」が、自宅に帰ったら「ウータン(うさぎ)」達と裸でたわむれているのが、何とも言えず面白いのですが…。
ヤミ金の金利を実質年率に換算すると?
実質年率に換算すると、下のようになります。参考までに消費者金融も一緒に並べておきます。
- 消費者金融…18%
- トイチ…3100%
- トニ…7万900%
- トサン…126万4600%
- トヨ…1822万2600%
- トゴ…2億1841万6400%
もはや「気違いじみている」…というのがわかるでしょう。トゴの「2億」というのは「利息」ではありません。(利息はもっと多いです)
これは何「倍」に増えたかという指数(パーセントなので、100で割る)なので、実際の利息は、次の様になります。
ヤミ金で1万円借りて、1年間返済しなかった時の利息
1万円借りて、1年間利息も元金も返済しないと…。下のような「天文学的に」悲惨な状態になります。
- トイチ…31万円
- トニ…709万円
- トサン…1億2646万円
- トヨ…18億2226万円
- トゴ…218億4164万円
大事なことなので繰り返しますが、借りたのは「1万円」だけです。一番マシなトイチでも「31万円」になっているんですね。利息だけで、1ヶ月分の給料が飛ぶ…ということです。
トヨ・トゴに至っては、「もう、何…?」という感じでしょう。プロの投資家が一生かかっても稼げないような金額が―。
- 1万円を
- 1年借りただけ
で、「利息」として発生するのです。
(正確に言うと「218億4164万円」のうち、「1万円」が元本ですがもはや全部利息のようなものでしょう)
利息と元本の割合が、もはやギャグではないかというくらいのレベルになっています。トゴというのは、これほど悲惨なヤミ金なのです。
このサイトでは何度も繰り返し語っていますが「絶対に」借りてはいけません。
ヤミ金の利息が莫大になるのは、「複利」の力
少しでもお金や投資のことを知っている人なら、これが「複利の魔法」というのに、すぐ気づくでしょう。
「新聞紙を32回折りたたむと月に届く」という有名な話もありますが、これも「折りたたむ度に、2倍の厚さになる」という、複利の力です。
(2倍=200%の複利がかかっているわけですね)
複利での利息計算の法律の規定はどうなっている?
ヤミ金融のように「元本を大幅に超える利息」については、複利がかからない法律になっています。
たとえば、「出資法第5条」は「利息及び保証料の計算方法」という章です。その「5条の4」で、下のような書かれています。
一年分に満たない利息を元本に組み入れる契約がある場合においては、元利金のうち当初の元本を超える金額を利息とみなす。
意味を簡単に言うと「利息が元本よりも大きくなったら、元本を超えた分は、全部利息とする」ということです。つまり―。
- オーバーした分には、金利がかからない
- 単純な「1ヶ月の利息」として、毎回計上されるだけ
ということです。つまり―。
- 「元本」には利息がかかるが
- 「利息」には利息がかからない
ということです。ヤミ金が高いのは「利息にも利息がかかる」からですが、「それがなくなる」ということですね。
これだけでも、たとえば「トゴ」の場合でも、利息は大分小さくなるのです。(それこそ天文学的に)
しかし、それでも「10日で5割」という金利設定自体が違法すぎるので、悪徳業者であることには、変わりないのですが…。
貸金業法の、複利に関する規定
出資法とは別に「貸金業法」の規定も見てみましょう。貸金業法では14条「貸付条件等の掲示」の1項で、複利について書かれています。
原文は目眩がするほど長いのですが、要約すると下の通りです。
- 金利は「パーセント」で表示する
- 金利は「利息÷元本」で出す
- 利息は「内閣府令」で決めた方法で出す
- 利息に利息をかけるのはありだが
- その金利が「利息制限法を超えたもの」だったら無効とする
…ということです。こうして要約すると割と簡単な内容ですが、原文はこれだけを語るのに「396文字」と、ほぼ「原稿用紙1枚分」を使っており、法律文書を読み解くめんどくささを、あらためて実感します。
とにかく、キャッシングの複利に関する規定は―。
- 出資法5条の4
- 貸金業法14条の1
に書かれているということです。複利自体は許可されていますが、
- 利息制限法を超える金利でかけてはダメ
- 元本を超える金額はダメ
という規則なので、どの道ヤミ金の複利は違法なのです。
複利に関するアインシュタインの名言について
ヤミ金の複利は非常に恐ろしいものですが、複利の力について、アインシュタインがこういう名言を残した(という出典不明の)言い伝えがあります。
- 「複利は、世界の8番目の不思議」
- 「複利は、歴史上最大の数学的発見」
- 「複利は、宇宙で最も大きな力」
これを英語で検索すると、このような原文が出ます。
“Compound interest is the eighth wonder of the world. He who understands it, earns it … he who doesn’t … pays it.”
直訳すると「複利は、世界で8番目の不思議だ。これを知る人はこれを得て、これを知らない人は…、これを払う」となります。
本当にアインシュタインが言ったかどうかは置いておき、この後半の「これを知る人はこれを得て…」の部分は、非常に面白いなと思います。
アインシュタインが言ったという出典はない
こういう名言をアインシュタインが残した…という記録・出典はどこにもありません。たとえば、ペイパル創業者で、世界で一番有名なベンチャー投資家の一人、ピーター・ティールは、日経のサイトで、これらの格言を引用して、下のように語っています。
「実際、アインシュタインがこう言ったという出典はない。言い伝えに過ぎない。しかし、…(以下略)」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/book/20140919/271507/
というように、ピーター・ティールも公式に語るくらい「この言葉には出典がない」のです。こういう名言の類は後世の人々がどんどん尾ひれを付けて広めていくので、一応「出典はない」ということだけ、強調しておきます。
(ちなみに、私が一番「トンデモ」な名言だと思うのは、織田信長が言ったと言われる「絶対は絶対にない」です。これが信長の言葉である可能性など、絶対にないというくらい、いい加減なデマです)
これは紀元前から哲学の世界にあった「相対主義のパラドックス」というものです。「信長が言っていない」という証拠は確かにないですが「紀元前からすでに言われていた」という証拠はあるので「信長が最初でない」というのは確かでしょう。(信長を汚すようなことは、しないでほしいものです)