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ヤミ金融からお金を借りてもいい場面 ~高利貸の存在意義~

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ヤミ金融からお金を借りてもいい場面は、実はあります。というのは、「ヤミ金融は2通りある」からです。

  • 1.法定金利より「やや高い」だけで、悪人ではない
  • 2.最初から債務者を「搾取しまくる」つもりの悪人

…という風です。前者のヤミ金…というより「高利貸」が、なぜ「悪人ではない」のか説明します。

(最初に補足しておきますが、反社会的なヤミ金からお金を借りることは、絶対にNGです。そういうヤミ金と「悪人でない高利貸」の違いは、読み進めていただければわかります)

目次

1.沖縄の商店街を支えている「ヤミ金」たち

沖縄を代表するキャッシング会社だった「ジャパンクレス」。現在は2013年に破産してしまいましたが、ここの知念太郎社長(2009年当時)は、下のように語られています。

  • 国際通りの商店街は、おばあ(中年女性)が一人で運営している店が多い
  • 彼女たちは、トイチなどの「高利貸」から借りている
  • 「彼らの金利は高すぎる」と教えたが、おばあたちは彼らを歓迎していた

ジャパンクレスは「一般のキャッシング会社」で、当然ヤミ金ではありません。この知念社長が国際通りに営業をかけて、「彼らの金利は違法ですよ。うちだったら遥かに安く融資できますよ」と言ったら、「逆に、彼女たちが高利貸を歓迎していた」ことがわかったんですね。

なぜ「トイチ」(10日で1割)のような高利貸を歓迎するのか?理由は下の通りです。

1-1.シーズン中は、とにかく「日銭」を借りたい

「おばあ」たちがヤミ金を利用するのは、主に「観光シーズン中」。この時期の商店街は―。

  • ガンガン儲かる
  • 代わりに、ガンガン在庫がなくなる
  • だから、どんどん『仕入れ』が必要
  • 仕入れのお金が、今すぐ欲しい

…ということです。「銀行に下ろしにいけば?」と思うでしょう。しかし、「一人で店を切り盛りしている」女性の場合、「そんな時間がない」んですね。

「オフシーズン」なら、そのくらいの余裕はあるでしょうが、「バカンスシーズン」の忙しさと、稼げる時給を考えたら「いちいち自分で銀行に行かなくても、毎日『お金を宅配』してくれる業者はありがたい」わけです。

1-2.ヤミ金は「毎日集金&融資」に来てくれる

この点、沖縄の高利貸たちは「島人」(しまんちゅ)なので、事情をよくわかっています。彼らは毎日おばあたちを訪問して「集金&融資」をしてくれるのです。

  • 高利貸「おばちゃん、昨日の利息500円取りに来たよ~」
  • おばあ「ほら、500円。今日も仕入れがあるから5万円貸してよ」
  • 高利貸「ええよ~。じゃ、5万でトイチだから、明日もまた500円ね」

…という風です。驚いた人もいるでしょう。「ヤミ金融の代名詞」となっている「トイチ」でも、実は「5万円を1日で返済するなら、利息は500円だけ」なのです。

こうして冷静に「金額」を見ると―。

  • シーズン中に、自分で銀行に行く時給を考えれば、高くない
  • むしろ、歩き回る高利貸の時給を考えれば、決して高利ではない

…となるでしょう。高利貸もこのくらいもらわないと「訪問サービス」はできないわけです。逆に言えば「トイチの金利をもらうからこそ、このサービスができる」のです。

実際、彼女たちが知念社長になんと言ったか、そのままの言葉で紹介します。

「だって、あんたのとこ毎日集金してくれないでしょ、こっちは一人で商売やってるから振込みなんていけないのよ」(『「貸せない」金融』P.133より引用

彼女たちにとって大事なのは「金利が安い」ことではなく「毎日集金・融資に来てくれる」ということなのです。

1-3.1日~数日で返済するので、利息は大してかからない

そもそも、ヤミ金融に手を出した人たちがなぜ破産するかというと「すぐに返済しない」からです。すぐというのは「数日」のことです。基本的に「10日超えたらアウト」です。

沖縄のおばあたちは、先にも書いた通り「1日~数日」で返済します。「5万円借りて、1日で500円の利息」だったら、別にそれほど痛いものでもないのです。その5万円で仕入れた商品で、その何十倍も儲けることが、バカンスシーズンだったらできるわけですからね。

これは普通の消費者金融のキャッシングでも言えることですが「短期間で返済するなら、金利はそれほど関係ない」のです。消費者金融と銀行カードローンを比較してよく悩んでいる人がいますが、「短期間で返済できるなら、迷わず消費者金融から借りるべき」(急いでいるなら)といえます。

1-4.「法定金利」では、このサービスはできない

当たり前ですが、「良いサービス・良い商品」は高いです。たとえば有名ブランドのブルガリが製造する高級チョコレートは、「1粒1750円」します。(ルイ・エ・レイ=彼と彼女。2粒で3500円)

で、先にも書いた通り、沖縄の商店街に根付いている高利貸には「歩き回る時給」が必要なのです。普通のキャッシング業者やクレジット会社が「電話一本」しかしないところを、彼らは「必ず毎日足を運ぶ」わけです。

そうやって毎日足を運んでも―。

  • スムーズに返済してもらえるとは限らない
  • そもそも「貸金業法違反」として検挙されるリスクが常にある

…ということを考えると、「決しておいしい商売ではない」ということがわかるでしょう。本当に美味しい商売だったら、みんなが参入しているか、あるいは政治家に近い立場の人間が「利権」を発動させて横取りに行きます。

決してヤミ金融や高利貸を擁護するわけではありません。しかし、「沖縄のおばあたちが求めているサービス」を提供するには、「これだけの利益」が最低限必要なんですね。

キャッシングやクレジットカードの金利を考える時は、最低限こうした「市場原理」を考える必要があります。

2.金利引下げで壊滅した、沖縄のクレジット市場

2006年12月の貸金業法改正―。これによって「上限金利の引き下げ」が起きました。

で、この時全国のキャッシング業者が次々に倒れたのですが、もっとも悲惨だったのは沖縄。「沖縄市場最大の倒産」である、クレジット会社オークスの破産(オークスショック)が起きたのです。

オークスは沖縄で「シェア33%」を誇っていた、県内最大のクレジット会社です(オリコやセゾンなどの大手よりも、オークスの方が上だったんですね)。

なぜオークスがそれほど沖縄に根付いていたのか。ここの倒産により沖縄がどうなったのか―。これを見ると「ヤミ金とか高金利とか、政府が一概に決めていいのか?」と、疑問に思うはずです。

2-1.沖縄では「全国基準」の審査は通じない

沖縄は「平均年収が、日本最低」の都道府県です。当時の平均年収は『209万円』で全国最下位。1位の東京都が『482万円』だったので、何と「半分以下」だったわけです。

知っての通り、失業率も全国でダントツ1位です。私が愛知県のパチンコ屋で働いていた頃「正社員・アルバイトの半分が沖縄出身」という、「ここは何県だ?」状態だったのを思い出します。(ちなみに、残りの半分は北海道出身)。

そういう土地なので、沖縄でセゾンやオリコなどのクレジット会社が「全国基準」の審査をしたら「沖縄人は、誰もカードを作れない」という状態になってしまうんですね。

実際、作れなかったのです。だから、全国的には無名のオークスが「沖縄で最大」のクレジット会社になっていたんですね。

簡単に言うと、オークスの審査は「ゆるかった」のです。

2-2.金利引下げで大混乱した沖縄市場

「ゆるい審査」でもオークスがやっていけたのは、「高い金利」を取っていたからです。高い金利といっても、もちろん違法な金利ではありません。あくまで、当時のアコム・プロミスなどの大手の消費者金融と同じ「グレーゾーン金利」です。

(グレーゾーンというと悪いことをしていたようですが、これはハッキリ言って「金利を決める法律が2つある」というねじれ構造の方がおかしかったのです)

で、改正貸金業法によって―。

  • グレーゾーン金利は無効
  • 過去にこの金利で取っていた分まで含めて、返還しなければならない(過払い返還)

…となりました。これによって最大手の武富士が倒産、アイフルも倒産寸前まで行く、という大打撃を受けたのですが、それはオークスも同じでした。

そして「沖縄のクレジット社会の3分の1を占める」オークスの倒産は、沖縄の市場全体を混乱させたのです。

2-3.新車の売上が約4割減少、商工会がオークス保護を呼びかける

まず、大打撃を受けたのは「自動車市場」。オークスで組んでいた自動車ローンが仕えなくなったことで車を買えない沖縄人が急増したのです。データを箇条書きすると―。

  • 沖縄県自動車協会のデータ
  • 2009年1月の新車販売台数
  • 前年同期比で『37.3%』の減少

…ということです。簡単に言うと「1年で、約4割減った」ということですね。そして、このような打撃は自動車関連だけでなく、沖縄のほぼすべての産業で起きました。

  • オークスカードの利用者も、買い物できない
  • オークスを導入している加盟店も、カードによる買い物客が減る

…ということで、買い手・売り手の双方に打撃となったんですね。あまりに事態が深刻だったので、沖縄県商工会議所が「オークスが倒産しても、カードをこれまで通り使えるようにしよう」という運動を起こしたくらいです。

2-4.相談センターへの苦情の8割が「借りられない」

個人の債務情報の開示などをする、沖縄県情報センター。ここの屋比久武所長(09年時点)によれば―。

  • 少し前まで「過払い」に関する問い合わせが多かった
  • しかし、最近は8割の相談が「お金を借りられない」となっている

…ということです。これは沖縄だけではありません。この時期、全国的に「借りられない」「貸し剥がしにあった」という苦情が相次いだのです。

2-5.なぜか「その他」が1位の、金融庁への問い合わせ

当時の金融庁に寄せられた「借金」に関する相談・苦情。これを見ると06年~08年の2年間で、寄せられた相談・苦情の内容は―。

  • 相談…「その他」が1位
  • 苦情…「その他」が2位

となっています。何で「その他」が1位、2位なんだ?」と誰でも不思議に思うでしょう。実は、この統計の項目には、「貸し渋り・貸し剥がしにあった」というものがなかったのです。

この2つは「その他」に組み込まれていたんですね。だから、相談でも苦情でも「その他」が急伸したのです。(沖縄では8割がこの「その他」だったわけですから、急増するのは当然でしょう)。

金融庁は、意図的にこの項目を「その他」にしたのでは?という指摘もあります。「貸し渋り・貸し剥がし」が1位だったなどと発表したら「自分たちの政策がまずかった」ということを、表明してしまうのと同じだからです。

これは別に金融庁を批判しているわけではありません。そもそも法律というのは―。

  • まず制定してみて(立法)
  • 運用してみて(行政・司法)
  • 変だと思う部分は作りなおす(立法)

…という流れを繰り返して、改善されていくものです。だから「新しい法律を制定した時、何かしら混乱が起こる」のは当たり前なのです。だから「借りられない」苦情が殺到したのが悪いのではなく何で、それを表に出さなかったのかというのが疑問なんですね。

表に出せば、もっと議論も活発になって全体として良い方向に行ったのに…と思います。

2-6.地元テレビ局も、金利引き下げの問題点を指摘

当時の地元テレビ局の報道を見ても、沖縄県人が決して「貸金業法改正を支持していなかった」というのが見受けられます。

*琉球朝日放送(2009年12月9日)『Qリポート 改正貸金業法の波紋』

http://www.qab.co.jp/news/2009120913774.html

実際の「声」を紹介するのが一番説得力があるので、引用させていただきます。那覇市内の老舗居酒屋「ぐるてん」店主の奥平秀光さんの言葉です。

「(キャッシング業者が)一番ありがたいなと感じるのはですね。“雨降りに傘を貸してくれた”という印象で思っています」

「雨降りって毎日続くわけじゃないですから」「短期間にぱっと貸して頂いて、そして“晴れの日を迎える”そういうことは今まで何回もありましたよ」

他にも、多重債務者を救済するNPO「女性自立の会」の有田宏美・理事長のインタビューなどもあります。やはり「多重債務者の方が、まともな業者から借りられなくなって、どうするのかが心配」と答えています。

金融庁は「多重債務者を減らす」ために貸金業法を改正したのですが、その「多重債務者を救うNPO」の代表の方が、このように心配されていたわけですね。

琉球朝日放送は、このレポートのまとめで、改正貸金業法を

悪徳業者と、多重債務者という極端な両端に重きを置いた劇薬

…と表現しています。確かに狙いは正しかったのですが「劇薬だけに、副作用が大きかった」ということです。この点は、当時改正の中心的立場にいた大森泰人・信用制度参事官などの方も、「いくつかの問題が起きるのは覚悟の上で、『これ以上多重債務者を出さない』ということを、最優先した」という趣旨の発言をされています。

(大森氏の主張は明快かつ覚悟がしっかりしており、氏のインタビューを読む限り、金融庁がいわゆる「銀行との癒着」などをしていたわけではないことが伝わります。詳しくは『理解されないビジネスモデル 消費者金融』という本の終盤の、大森氏のインタビューをご参照ください)

…というように、金融庁が単純に失敗したというわけではないのですが、琉球朝日放送が言うように「劇薬だった」のは確かです。

3.まとめ&参考資料一覧

3-1.まとめ…経済は生き物。臨機応変に考えるべき

貸金業法の改正に限らず、経済というのは「生き物」です。常に「市場原理」で動くので、「お役人が机の上で考えた」ようにはなりません。

これは、過去に江戸幕府が「寛政の改革・天保の改革」などで上限金利の設定をした時にも、遠山の金さん(遠山景元)が指摘したことです。(『金貸しの日本史』)

確かに「多重債務者から搾取する」ことしか考えていないような悪質なヤミ金融は、徹底して取り締まるべきです。この点では改正貸金業法は間違っていません。

ただ、体の「善玉菌・悪玉菌」と一緒で、「高利貸にも、善玉と悪玉がある」ということです。改正貸金業法は、この「善玉菌」も一緒に殺菌して殺してしまう「消毒剤」だったんですね。

「善玉菌を殺さずに活かす」ということを、中国古典の言葉では「清濁併呑」(清濁併せ呑む)といいます。(出典『史記』酷吏列伝)

老子は「法令いよいよ明らかにして、盗賊あること多し」と言いましたが「規制だけで社会を動かそうとすると、逆に悪人がはびこるものだ」という意味です。改正貸金業法は「善玉の高利貸」を締め付け「悪玉のヤミ金」を増やしてしまった一面もあるのです。

3-2.補足…「搾取だけを考えるヤミ金」からは絶対借りない

しっかり読んでいただけたらわかるはずですが、私は「ヤミ金融を支持」しているわけではありません。あくまで、沖縄の商店街と共存していたような「地域の役に立っていた」高利貸の一面を指摘しているだけです。

『闇金ウシジマくん』に登場する悪役のような「弱者から搾取しつくし、薬物中毒にまで追い込む」ようなヤミ金融は当然ながら、絶対にアウトです。借りるべきでもありませんし、そうした業者が存在することも許されません。

書きたかったのは「高利貸の、善玉と悪玉を区別しよう」ということです。もちろん、これは法的に区別できるものではないので「私たち個人の感覚」で区別するのです。

3-3.参考書籍・サイト一覧

  • 小林幹男(2009)『「貸せない」金融』角川SSコミュニケーションズ.
  • 水上宏明(2004)『金貸しの日本史』新潮社.
  • 藤沢久美・片野佐保・真水美佳・川島直子(2008)『理解されないビジネスモデル 消費者金融』時事通信出版局.
  • 琉球朝日放送『Qリポート 改正貸金業法の波紋』2009年12月9日放送

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