株やFXの資金としてキャッシングするのはNGです。理由は―。
- カードローン会社が利用規約で禁止している(ことが多い)
- 自己破産しても、免責が下りない(借金がチャラにならない)
という理由です。
自己破産しても、投資・FXの場合、免責できない
自己破産というのは、必ず借金がチャラになるわけではありません。自己破産を宣言した後、裁判所から「免責」というのを受けないといけません。
「責任を免れる」ということですね。「返済の責任がなくなる=借金帳消しにできる」ということです。
で、株式投資・FX・バイナリーオプションなどで自己破産した場合、この免責がおりません。つまり「最後まで、自力で借金を全額返済しなくてはいけない…ということです。
投資・FXの借金は「免責不許可事由」になる
「自己破産しても免責が下りない」というのは、一定の条件が決まっています。それらの条件を「免責不許可事由」といいます。
これは破産法252条に書かれているもので、投資については「破産法252条1項4」に書かれています。
以下、引用すると下の通りです。
浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
分解しながら要約すると、下のようになります。
- 浪費や賭博
- 射幸行為(投資・FXなど)によって
- もともと持っていた財産を減らしたり
- 多額の借金をしたこと
つまり「FXや株のためにキャッシングする」というのは、この「射幸行為」と「そのために多額の借金をしたこと」という部分に該当します。ということで、自己破産を宣言しても、借金帳消しにできない…ということです。
ちなみに、投資やFXに関するもの以外も、「免責不許可事由」を一覧にすると、下のようになります。その前に簡単に主な内容を書くと―。
- ギャンブル
- ヤミ金からの借り入れ
- クレジットカードの現金化など
- キャッシング審査で嘘をついた
というものも、すべて免責不許可事由にあたります。つまり「明らかに自業自得な借り入れ」というのは、「自己破産しても、借金がなくなるとは限らない」のですね。
(以下、免責不許可事由を一覧にします)
自己破産の免責不許可事由・一覧
株やFXなどの投資以外でも、免責不許可事由にあたるものは、下の一覧です。
- 財産を「隠した」
- 財産を「損壊した」(思い切り減らした)
- 財産を「不利益に処分」した(他人への贈与など)*貸し手にとって不利益、ということ
破産法第252条第1項
「投資やFXの借金は自己破産できない」(免責がおりない)というのは、破産法第252条1項に書かれています。以下、その中の各項の内容を、要約します。
(それぞれ、252条1項1、1項2…というようになっています)
■ 1.破産財団の財産を、隠したり、価値を下げるなどした
破産財団というのは、団体のことではありません。「自己破産によって処分される財産の固まり」のことを言います。
ここでの「団」は「団体」ではなく「団子」のような意味だと思ってください。ちなみに「公益財団」というのも、「公益のための財産の固まり」のことです。
で、それを隠したり、不動産をわざと損傷するなどしてはいけない…ということですね。
■ 2.破産を先延ばしにするため、ヤミ金などで借り入れをする
すぐに破産手続きをせずに、先延ばしにするためにヤミ金などで借りたり、信用取引で商品を買って、それを売る…という行為です。後者については「クレジットカードの現金化」もそれに当たります。
■ 3.特定の貸し手だけに、優先的に返済した
「優先的に返済」というのは一つのパターンに過ぎません。要は「明らかに、この業者とグルじゃね?」と疑われるような返済の仕方がどこかにあったら、それは自己破産できない、ということです。
■ 4.浪費・賭博・投資などの射幸行為
株式投資やFXなどの借り入れは、ここで禁止されています。要はこういう「無駄遣い」「金儲け」などのために借金した場合は、借金がチャラにならない…ということですね。
■ 5.すでに破産しかないとわかっていたのに、嘘をついて新たな借り入れをした
現時点の借入状況を偽る…などの虚偽申告ですね。「できるのか?」と思うかも知れませんが、昔はできたのです。たとえば「江頭=えがしら」という苗字なのに「えとう」という読みで申し込みしたら、それで審査に通る…ということがあったんですね。
■ 6.財産や業務に関する書類を、偽造・隠滅などした
要するに「書類をごまかすな」ということです。上の5番との違いは「破産より遥か前の、まだ借り入れが少額だった頃でも」、こういう行為をしていたらダメ、ということ。
■ 7.自己破産の手続きで、虚偽の債権者名簿を出した
当然ですが、これは裁判所を騙そうとする行為ですから、絶対NGです。これはもう確信犯的な反社会勢力しかやらないでしょうが、これも理由の一つになります。
■ 8.裁判所の破産手続きの調査に協力しなかった
これも当然ですが、たとえば嘘をつく、書類を隠蔽するなどの「非協力的態度」を取ると、当然NGになります。さすがにこんなことは一般人ではできないでしょうが…。
■ 9.破産管財人・保全管理人などの業務を妨害した
これは上の8番とあまり違いませんが、ダメなのは当然です。
■ 10.以前に免責が下りてから、一定期間内であること(期間については、免責の内容や種類によって、それぞれ違いますが、大体7年くらいです)。
■ 11.その他の義務に違反したこと
正確には―。
- 破産法第40条第1項第1号
- 第41条又は第250条第2項
プラスその他の義務に違反したこと…となっていますが、それぞれの条文を知りたい方は、検索してチェックしてください(そこまで書くと、かなり長くなるので)。
1回目だったら「裁量免責」によって、借金がチャラになる
上のように書いたものの、一回目の自己破産の場合は、FX・投資・バイナリーオプションなどが原因の借金でも、帳消しにできる場合があります。
これは「裁量免責」というもので、「裁判官」の「裁量=自由判断」によって免責にできるということです。これについては、免責不許可事由と同じ「破産法252条」の次の項(第二項)に書かれています。
前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
…というのが全文ですが、これも要約しましょう。
- 上に書いたケースのどれかに該当しても
- その破産者の事情が、やむを得ないものなら
- 裁判官の判断で、免責許可をしてもいい
…となります。「さっき書いたことと同じじゃん」と思われるかも知れませんが、その通りです。法律文書というのは、とにかく簡単なことを、やたら小難しく書いているだけなのです。
もちろん、小難しいのには理由があって「絶対に抜け穴を作らないようにする」という意義・目的があります。なので、これで仕方ないのですが、一応「破産法の原文には何と書いてあるのか」という解説として、引用しました。
(ちなみに、自己破産や免責不許可事由に関する条文は、貸金業法・銀行法・割賦販売法・質屋営業法などに書かれているのではなく、この破産法に書かれています。この点は混同しないようにしてください)
*たまにキャッシングの情報サイトで「免責不許可事由は、貸金業法のルールによって…」などと書かれているので。