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カードローン・消費者金融の取り立てにヤクザが来る?

yakuza

消費者金融の取り立てでヤクザが来る―。ということはまったくありません。「何世紀前の都市伝説ですか」と言いたくなるくらい、これは世間の「間違った偏見」の1つです。

(最近では消費者金融もかなり身近になっているので、このような偏見を持っている人も少ないでしょうが…)

そもそも『闇金ウシジマくん』のモデルとなったトキタセイジ氏という闇金の方でも、ヤクザとつるまずに営業していました。ヤミ金ですら「ヤクザなし」でやっていけるのですから、ましてまともな大手・中小の消費者金融の取り立てで、ヤクザが来るわけがないのです。

1.ヤミ金ですら、ヤクザなしでやっている?

1-1.ヤクザの影響力は、日に日に弱まっている

ヤミ金の世界でも「ヤクザの影響力が弱まっている」というのは、冒頭に書いたトキタセイジ氏の証言でもわかります。トキタ氏の『路地裏拝金エレジー』(2014/蒼竜社)という本があるのですが、そこにはヤクザがトキタ氏にぺこぺこしながら、お金を借りに来る」という描写があります。

というと「そのトキタって人が、自慢したくて書いたんじゃないの?」と思うかも知れませんが、そうではありません。書かれている重要なポイントをまとめると、下の通りです。

  • ヤクザの取り締まりは年々厳しくなり、稼ぐのが難しくなっている
  • その中で、ヤミ金にお金を借りに来るようなヤクザは
  • 「シノギ」(仕事)がうまく行っていないと、告白しているようなもの
  • 当然、ヤクザの世界での立ち位置も、大したことはない

だから「トキタ氏が強かった」というのもあるかも知れませんが、氏本人が書かれているように「ヤクザといっても、要は社会に適合できなかった人間が集まっているだけで、格段怖いわけではないし、普通の人間と特別違うわけでもない」ということです。「意外と普通」ということですね。

  • 「もともと普通」の人たちが
  • 「さらに締め付けられている」ので
  • ヤクザの影響力は「日に日に弱まっている」

↑こういうことです。

1-2.「任侠」で生きるヤクザは激減している

ヤクザというと組のために「鉄砲玉」になって相手の親分を暗殺し、懲役を受けて名を上げるというような「任侠」のイメージがあるでしょう。しかし、これは「日本人はみんな空手を習っている」というような、外国人の間違ったイメージと同じです。

人気マンガ『クロサギ』の原作者である夏原武氏なども書かれていますが、「今のヤクザは、楽して儲ける方法を考えるのが仕事」であり、少なくとも若いヤクザの間では、もう任侠の世界は流行っていないのだそうです。

実際「オレオレ詐欺・振込詐欺」の全盛時には、その総元締めとなる人物は「月収1億~2億円はあった」と推定されています。金額だけ聞くと、不謹慎にも「羨ましい」と思ってしまいますが、一般人でもそう思うなら、ヤクザならなおのことでしょう。

(一般人がこういう方法で稼いでも誰も褒めてくれませんが、ヤクザの世界なら「名声」までついてくるわけですから)

ということで、ヤクザもみんな「損得」「経済」で動く時代になっているんですね。合う意味合理的で「話をつけやすい」わけです。だから「ヤクザなしで動けるヤミ金」も増えているんですね。

1-3.貸金業法改正以後、取り締まりが厳しくなった

もう一つ、消費者金融などの金融業にヤクザが絡まなくなった理由として、2006年の貸金業法改正以後、ヤミ金・暴力団の取り締まりが厳しくなったという背景があります。

なぜ「貸金業法改正」によって厳しくなったのか。多くの人は「それが改正の重要な内容だったんでしょ」と思うでしょう。残念ながら違います。

1-4.金利引き下げによって、ヤミ金に走る人が増えた

実は「多重債務者を出さない」ことを目的として行われた貸金業法の改正。これが逆に、低所得者の生活を苦しくし、ヤミ金に走る人が増える原因となったのです。どういうことかというと、下の通りです。

  • 法改正によって「金利引き下げ」が決定した
  • 低い金利は、業者にとって「ローリターン」である
  • ということは「ローリスク」な人にしか貸せない
  • 低所得者がお金を借りられなくなる

また、貸金業法改正ではもう一つ「総量規制」もありました。「年収の3分の1までしか借りられない」というルールですね。

実は、これが決定した時点ですでに「消費者金融やクレジットカードを利用する人の6割は、年収の3分の1以上借りている」状態だったのです。だからこれらの人は、下のようになります。

  • 一切お金を借りることができない
  • 状況によっては「大幅な繰り上げ返済」を要求される

「借りなければいいじゃん」と思うかも知れませんし、その通りですが、零細事業者の場合「資金繰りで、どうしても必要」という場面もあるのです。

そういう人が普通の消費者金融で借りられなくなったため、ヤミ金やクレジットカードの現金化に手を出すようになった―。この問題点が明らかになって、専門家の間でも批判が高まったんですね。

1-5.「対策」として、警察の摘発を強めた

で、国としては「貸金業法は失敗だった」と認めるわけにはいきませんし、また「多重債務者の人を助ける」という本来の目的は、果たしたいと思うものです(使命感を持って仕事をしていた方々の場合)。

ということで、対策として「ヤミ金・反社会勢力の取り締まり」を強化したのです。反社会勢力の活動はいろいろありますが、特に金融系を、これまで以上に取り締まったんですね。

そのため、貸金業の世界では、昔のように「ヤクザが幅を利かす」ことはできなくなったのです。とはいっても、彼らが今さらまともな仕事に就くことはできないので、下のようになります。

  • 「偽装質屋」のような、新たな詐欺を考える
  • 「生活保護」を受ける

こういう道を歩んでいるんですね。意外かも知れませんが、「生活保護を受けている、元ヤクザ」というのは、たくさんいるのです。(これもトキタ氏の本に書かれています)

2.大手の消費者金融は完全に「銀行化」している

2-1.プロミス・アコムなどはすでに「銀行のグループ」

知っている人も多いでしょうが、アコム・プロミスなどの大手の消費者金融はすでに「銀行のグループ」に入っています。

  • プロミス…SMBCグループ
  • SMBCモビット…SMBCグループ
  • アコム…三菱UFJ銀行
  • レイク…新生銀行
  • ノーローン…新生銀行

という風です。大手で今でも独立を貫いてるのは「アイフル」だけです。(だからこそ、2006年頃、大手の消費者金融の中でアイフルだけが集中攻撃されたのですが…)

このように銀行のグループに入っている以上「取り立てに反社会勢力を呼ぶ」なんてことは、絶対にないわけです。それどころか、ちょっと荒っぽい口を利くだけでも、銀行全体のイメージの悪化につながり、それがどれだけの金銭的損失になるか、計り知れません。

ということで、大手の消費者金融の取り立てでは「ヤクザが来る」どころか「お金を返さない人に対して、これほど甘くていいのか」というくらい、ソフトなんですね。

2-2.銀行系でなくても、接客・催促は丁寧

上では「銀行系」の話をしましたが、銀行系でないアイフルのような消費者金融も、もちろん非常に丁寧です。丁寧に接した方が口コミ・評判が良くなり、利益につながるのだから、当然です。

もともと、消費者金融というのは多くの人が持つ「金貸し」のイメージ通り―。

  • 暗い
  • 怖い
  • 汚い

という「3K」の商売でした。しかし、これを変えたのが武富士を中心とした大手の消費者金融なのです。

2-3.「ソフトな消費者金融」は、武富士が先駆け

かなり意外でしょうが、上に書いたような「ソフトな消費者金融」は、武富士が先駆けだったのです。後にヤクザまがいの企業になってしまったので、そのイメージばかりが強いですが「昔の武富士は良かった」のです。

たとえば、今では常識となった「街頭でのティッシュ配り」。これを最初に行った企業は、武富士と言われています(『武富士流 金儲けの極意』より)。

これについては、国立国会図書館のデータを見ると1973年頃から消費者金融が始めたと書かれているだけで、本当に武富士かどうかはわかりません。しかし、当時政治家で、ソフトバンクの孫正義氏とも親しかった「責任のある立場」の高島望氏がこう書かれているので、おそらく「武富士が最初」で間違いないのでしょう。

(違っていたら、他のデータが出てくるはずですが、どこにもないので)

…というように「日本中に定着した、1つの広告文化」を生み出すくらい、武富士は「ソフトな消費者金融」の先駆けとなったのです。武富士とともに、他のプロミス・アコム・アイフルなどの消費者金融も「ソフトなサービス」に力を入れ、現在のような姿になったわけですね。

武富士は、晩年に創業者の武井保雄氏が「子供二人を幹部にした頃から、変わってしまった」(元幹部談、『武富士の闇を暴く』より)ので、今では武富士を讃えてはいけませんが、「昔はよかった」し、「今の消費者金融の良い部分を作った」のも、一部は武富士の功績なのです。

2-4.督促の姿勢は、過剰なくらい規制されている

武富士の話が長くなりましたが、大手の消費者金融の督促の姿勢は「過剰なくらい」規制されています。この点は『サラ金全滅』でも批判されています。

どう過剰かというと、たとえば「○月○日までにお支払い下さい」というのもダメというんですね。「お支払いください」というのが「強制」に当たるのだそうです(何のこっちゃ、と思ってしまいますが…)。

「ご入金をお願いいたします」という「お願い形」だったら良いらしいんですね。というわけで、今では消費者金融でもクレジットカード会社でもこの表現が使われていますが、悪質な債務者には、これでは全然効果がないのです。

もちろん、9割以上の利用者は「悪質」ではないので、これだけの督促で「いけない、すぐ払わなきゃ」と振り込んでくれます。なので、これでも確かにいいのかも知れませんが、個人的には悪質な遅延者に対しては、もっと強い言葉が許されてもいいと思っています。

3.延滞者から厳しく取り立てるのは、良いことである

3-1.早く返済しないと、困るのは延滞者本人

これはアイフル元社員の金融ライター・笠虎崇氏も指摘されていますが、早く返済しないと、困るのは遅延している本人なのです。理由は言うまでもなく―。

  • 遅延利息がかかる
  • 信用情報が悪化する

ということです。厳しくされてでも早く返済した方が、これらのデメリットがなくなるので「本人にとっても良い」ことなんですね。

  • 獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす
  • 地獄への道は善意で舗装されている

という言葉もありますが、「甘やかさないのが、本人のため」でもあるのです。これは別に育児・教育だけでなく「社会的な付き合い」でも同じなんですね。人間は他人なようで、他人ではないのです。

3-2.その他の利用者のためにも、早期返済させるべき

早期返済させるのは、延滞者本人だけでなく他の利用者のためでもあります。理由は―。

  • 返済の督促にはコストがかかる
  • そのコストは「全ての人の金利」に含まれている
  • つまり、真面目な「遅延しない利用者」が
  • 「遅延する人の分」まで、コストを負担している

…ということです。こう書くと「いや、その分を金利に転換しなければいいじゃん」と思う人もいるでしょう。だったら、「どうぞ、それで会社を経営してみてください」という話です(少し攻撃的な物言いですみませんが)。

そもそも、私達が消費するすべての商品・サービスは、こういう「悪意のある利用者によるコスト」が含まれています。

  • サービス業では「クレーマーに対応するスタッフの人件費」
  • 小売業では「万引きによる損失コスト」

などが「商品の価格」に含まれているのです。

『スラムダンク』流川の名言

『スラムダンク』の山王戦(29巻)で、致命的なミスをした桜木に対して、流川が下のような名言(?)を吐きます。

「税金みてーなもんだ。おめーのヘマはもともと計算に入れてる……つっただろ、ど素人」

この流川の言葉のように、すべての商品やサービスには「迷惑な人たち」によるコストが含まれているのです。「真面目なお客さんが、いつも損をしている」わけですね。

だから「遅延者に対して厳しく取り立てる」ことは、正しいのです。もちろん、その方法がヤクザまがいのものではいけませんが、「いついつまでに、返済してください」と強い口調で言い切ること、その電話をひんぱんにかけることは「むしろやらなければいけない」ことなのです。

3-3.海外の感覚では「回収は正義」である

『貸せない金融』は、オランダ銀行、リーマン・ブラザーズなどの外資系金融機関の要職を経験した、小林幹男氏による本です。この中では、オランダ銀行に小林氏が勤務していた頃、上司に下のように言われた、というエピソードが出てきます。

「日本では、なぜ回収がいけないのだ。回収をしないと、株主・社員・顧客など、すべての人々の利益を損ねてしまうではないか」

これは全くその通りです。上に書いた通り「全ての人のために、回収をしっかりすべき」なんですね。

3-4.「同情すべき延滞者」も確かにいるが…

もちろん、返済ができない人の中には「同情に値する人」も確かにいます。しかし―。

  • そうした人は、全体のせいぜい2割である
  • 残り8割の延滞者は「自業自得」であることが多い
  • そもそも、しっかり返済している人たちの方が断然善良である
  • どうして、その人たちを優先しないのか

というのが、現場をよく知る人々が口をそろえて主張することです。また『リテール金融のイノベーション』では、「弱者救済」と「金融業」を、一緒にしてはいけないということも指摘されています。金融業はあくまで「ビジネス」であり、「弱者の救済は、政府など別の組織がやらなければいけない」のです。(当たり前ですが)

ということで、確かに同情すべき延滞者の方もいますが、基本的には、消費者金融やクレジットカード会社は「強く取り立てる」ことが正しいんですね。国民の人気取りしか考えていない政治家は、こういう主張をしませんが、これが金融の現場に立つ人々の本音であり、正論(にかなり近いもの)なのです。

4.まとめ&参考資料一覧

4-1.まとめ「ヤクザがいないのは良いが、ソフトすぎる」

ここまで書いた通り、下のように言えます。

  • 消費者金融の督促に、ヤクザが出てくることはない
  • それどころか「ソフト過ぎる」くらいである

個人的には消費者金融やクレジットカードの督促は、もう少し厳しくてもいいと思うくらいです(理由はここまで書いた通りです)。

私たちが消費者金融に対して持っているイメージは、大部分が「マスコミに捏造されたイメージ」です。それは、2006年頃メディアでさんざん流された「アイフルの脅迫テープ」が、実はアイフルのものではなかったという最高裁の判決を見てもわかります。

逆に「多重債務者が善良な弱者である」というのも、ごく一部の話であり、ほとんどの人は違う、ということも少し研究すればすぐにわかります。

私たちはどんなことでも「メディアに与えられた一面的なイメージ」で、簡単に決めつける傾向があります。「メディアの情報には、嘘が多分に含まれている」という、当たり前の事実を再認識しましょう。

4-2.参考文献&サイト一覧

  • トキタセイジ(2014)『「闇金ウシジマくん」モデルが語る路地裏拝金エレジー』蒼竜社
  • 街金・ヤミ金の世界でも、ヤクザが影響力を失っていることなどについて、参考
  • 高島望(1997)『武富士流 金儲けの極意』ポケットブック社
  • 「街頭でのティッシュ配り」は、日本の企業の中で武富士が最初に始めた…ということが書かれている
  • また、店舗でお菓子やお茶を出して利用者をもてなすのも、武富士が最初に始めたとのこと
  • 国立国会図書館・レファレンス協同データベース「ポケットティシュの歴史」
  • http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000004370
  • 「消費者金融が街頭で配布し始めたのが1973年頃」と書かれている
  • それ以前に「美容院」や「みずほ銀行」が「宣伝用ティッシュ」を作った例は書かれている
  • しかし「街頭で配布」というのは、消費者金融が最初らしい(武富士かは不明)
  • 笠虎崇(2010)『サラ金全滅―過払い金バブル狂乱』共栄書房
  • 消費者金融の督促で「お支払い下さい」とすら言えない、過剰な規制を問題視している
  • 小林幹男(2009)『「貸せない」金融』角川SSコミュニケーションズ
  • オランダ銀行時代、外国人上司が「日本では、なぜ回収をしてはいけないのだ」と疑問視していたことが書かれている
  • 『太平記・十六』
  • 「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」の出典・由来
  • 原文は「獅子は子を産んで三日を経る時、万じんの石壁より母これを投ぐるに~(以下略)」というもの
  • 下のサイトに詳しく書かれている
  • 故事ことわざ辞典「獅子の子落とし」http://kotowaza-allguide.com/si/shishinokootoshi.html
  • マルクス『資本論』1巻 3編 5章 2節「価値増殖過程」
  • 「地獄への道は善意で舗装されている」の出典
  • 最初の由来は旧約聖書だが、この「善意で舗装」という表現が登場するのは『資本論』
  • 井上雄彦(1996)『スラムダンク 29巻』集英社
  • 流川が山王のエース・沢北をドリブルで抜いた瞬間「邪魔な場所」にいた桜木にぶつかったシーン(で、上記の名言が出る)
  • 杉浦宣彦・大槻奈那・伊藤亜紀・浅見淳(2013)『リテール金融のイノベーション』きんざい
  • 「金融政策」と「福祉政策(弱者の救済)」は、分けて考えるべきという主張がある

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