キャッシングに関する悪徳業者の1つに「紹介屋」があります。彼らの手口を簡単に言うと―。
- 「超低金利での融資」の広告を出す
- これによって、人を集める
- 来た人に「うちでは融資できない」という
- 代わりに「ここなら借りられるかも」と、ヤミ金を紹介する
…ということです。つまりヤミ金への誘導に対して、ワンクッション置くということですね。
目次
- 1.ヤミ金への誘導にクッションを置く意義
- └ 1-1.あくまで正規業者なので、広告を出しやすい
- └ 1-2.「紹介」ということで、ヤミ金も警戒されない
- └ 1-3.あくまで「本人に選ばせる」ので合法
- └ 1-4.わざと時間をなくして焦らせる手口
- 2.「弁護士事務所」とつるむ紹介屋もいる
- └ 2-1.多重債務者を弁護士事務所に紹介
- └ 2-2.通常よりも法外な手数料を取る
- └ 2-3.弁護士は「法律を使ったヤクザ」
- 3.紹介屋以外の、キャッシング関連の詐欺
- └ 3-1.「債権回収」詐欺
- └ 3-2.「押し貸し」詐欺
- └ 3-3.「アルバイト」詐欺
1.ヤミ金への誘導にクッションを置く意義
- 1-1.あくまで正規業者なので、広告を出しやすい
- 1-2.「紹介」ということで、ヤミ金も警戒されない
- 1-3.あくまで「本人に選ばせる」ので合法
- 1-4.わざと時間をなくして焦らせる手口
1-1.あくまで正規業者なので、広告を出しやすい
もともと、ヤミ金が広告を出すのは簡単でした。
- ヤミ金でも、都道府県知事の登録はもらえる
- 都道府県に登録さえしていれば、雑誌などの広告は問題なく出せる
…ということです。ただ、最近はこの現状が問題視され「一部の雑誌は、金融業の広告に対して、かなりチェックが厳しく」なっています。
そのため、「ヤミ金が直接広告を出す」のではなく、「紹介屋」という「ワンクッション」を置くことにしたんですね。
紹介屋自身は何も違法なことをしていないわけですから、雑誌などのメディアの側としても「広告お断り」とは言えないわけです。
1-2.「紹介」ということで、ヤミ金も警戒されない
たとえば、いきなりヤミ金からダイレクトメールや電話が来たら、誰でも警戒するでしょう。しかし―。
- 最初に「まともな業者」に行く
- そこで「紹介」される
…という順番だったら「あまり警戒しない」わけです。(繰り返しますが、最初の業者=紹介屋は、営業内容も建物も「すごくまとも」だからです)
紹介だったら警戒心が解かれる、というのは普通の人間関係でも同じですが、ヤミ金への誘導にも、その人間心理を利用するわけですね。
1-3.あくまで本人に選ばせるので、合法
紹介屋はあくまで「紹介」するだけです。紹介されたそのヤミ金に行くかどうかは「利用者本人が決めたこと」です。そのため、紹介屋のやっている仕事に、違法性は基本ありません。
それだけに、摘発がかなり難しいわけですね。紹介屋から直接ヤミ金を紹介するのでなく「さらにもうワンクッション置く」こともあり、ここまで来ると摘発は完全に不可能です。
多重債務で自転車操業をしている人の場合、こうやってクッションを複数置かれても「他のお金を借りるところがない」ので、やむを得ずたらい回しにされます。
そうしているうちに時間がなくなり「あと数時間で5万円借りないとやばい」という状態になると、最後に紹介されたヤミ金でも、何も考えずに5万円借りてしまう…というわけです。
1-4.わざと時間をなくして、焦らせる手口
これは紹介屋だけでなく、紹介屋を通さない通常のヤミ金でも同じですが「わざと時間をなくして焦らせる」→「相手が焦っている状態で契約させる」というのが彼らの手口です。
これはヤミ金やキャッシングだけでなく「人間の交渉全般」で言えることですが「時間がない人間ほど、不利な条件を呑まなければいけない」のです。
たとえば普通のサービスでも「特急料金」というものがありますが、これもある意味「時間がない人が、高い料金をふっかけられている」とも言えます。消費者金融の金利が銀行カードローンより高いのも「急ぎで審査して、融資してくれる」からです。
というように「相手の時間をなくせばなくすほど、契約が有利になる」ということを、ヤミ金や紹介屋は熟知しています。だから―。
- わざと「たらい回し」にする
- 契約の作業に時間をかける
- その間、相手が逃げないように「融資できる」素振りを常にしている
…という手口で、利用者を「確保」するわけです。
「融資できる」と言いながらやたら手続きに時間がかかる雰囲気があったら、「この業者は怪しい」と思うようにしてください。
2.「弁護士事務所」とつるむ紹介屋もいる
- 2-1.多重債務者を弁護士事務所に紹介
- 2-2.通常よりも法外な手数料を取る
- 2-3.弁護士は「法律を使ったヤクザ」
2-1.多重債務者を弁護士事務所に紹介
「紹介屋」とつるんでいるのは、ヤミ金だけではありません。弁護士や司法書士も、悪質な人々は「紹介屋を使っての『集客』」をしています。
紹介屋の広告につられて来るような人は、大体多重債務者が多いので、そのまま弁護士や司法書士を紹介する…という流れにもしやすいわけですね。
これ自体は、一応問題ありません。彼らが紹介する通り「専門家に頼んで、返済計画の再編をしたり、債務整理をしたりする方がいい」ことは多いからです。
ただ、問題は「手数料が法外」ということなんですね。「それを知っていて誘導する」から、この紹介屋も弁護士・司法書士の事務所も悪質なのです。
2-2.通常よりも法外な手数料を取る
紹介屋を利用する弁護士・司法書士は、通常の相場の2倍~4倍というような、高額の手数料を要求します。別にそれで利用者が契約してくれなくても「誰かが引っかかってくれたら儲けもの」なのです。
料金を伝えること自体は、ほとんど労力がかかっていません。どの道法外な利益があるので「見積もり」もしっかりする必要はないのです。
- 「適当に料金だけ提示」して
- 「契約したら、まじめにその案件をチェックする」
というやり方でいいんですね。このため、弁護士・司法書士の側としては労力的に「全くノーリスク」なわけです。
もちろん、このやり方は「弁護士法」に違反しているので、いつ懲戒処分を受けるかわからない…というリスク・デメリットはありますが。
2-3.弁護士は「法律を使ったヤクザ」
アイフルのトップセールスマンだった笠虎崇氏は、公式ブログは『サラ金全滅』などの著書で、「弁護士は法律を使ったヤクザ」という消費者金融の社員の声を紹介しています。
もちろん、すべての弁護士がそうというわけではなく「ごく一部の強欲な弁護士だけ」ですが、実際―。
- 社会正義などどうでもいい
- 法律知識を使って「合法的に金のなる木を得たい」
…という弁護士は多いんですね。特に「過払い金の返還」がブームになった時には、これに便乗しすぎて、日弁連から懲戒処分を受けた弁護士も、かなりの数いました。
ちなみに「弁護士は法律を使うヤクザ」に近い言葉として、『ナニワ金融道』の青木雄二氏の「銀行は、背広を着た金貸し」とか、『インベスターZ』の「銀行は、体のいい金貸しである」などがあります。
弁護士とか銀行とか「世間のイメージがいい職業」の人だからといって、簡単に信用してはいけない、ということですね。
3.紹介屋以外の、キャッシング関連の詐欺
3-1.「債権回収」詐欺
これは「債権回収会社」を装って「○日までに100万円返済しないと、差し押さえに入る」というような、脅しをかけるものです。
- 本人が借り入れをしている
- 借り入れ自体、まったくしていない
…という2つの場合がありますが、どちらにしても「本来払う必要がない」お金を請求する…というのが特徴です。
「払う必要がない」のに払ってしまう理由は―。
- 「債権回収会社」とか
- 「裁判」と聞いただけで
日本人は縮こまってしまう傾向があるからです。学校などで法律的な知識をまったく教わっていないので、「債権回収会社」というような単語を見ただけで、恐怖心を覚える」わけですね。
そうして焦って「借りてもいないのに」指定通りのお金を振り込んでしまう人が結構います。(あるいは、借りている人で「実際より多い金額」を振り込む…などです)
この被害はかなりの件数があり、法務省のサイトでも「架空債権回収の詐欺に、ご注意ください」という、注意喚起のページが作られています。
3-2.「押し貸し」詐欺
押し貸し詐欺とは、下のような手口です。
- ヤミ金が勝手に、Aさんの口座に振り込む
- そのお金を「Aさんに頼まれて、融資した」ことにする
- 例えば「10日で5割」の利息で10万円だと
- Aさんが気づくのに10日かかったら、それで「5万円」請求される
…ということです。もちろん、Aさんは融資してくれなどと言っていないわけですから、裁判にかければ無効です。しかし―。
- 暴力的な手段をちらつかせて、裁判を阻止する
- 「弁護士に相談したら、無事ではいられないと思え」などと脅迫する
…ということがあり、言われたままに払ってしまう被害者の方が多いです。金額が数万円程度の少額のことが多く「このくらいなら仕方ないか」と思ってしまうというのも、この被害が多い理由です。
入念な場合、貸借契約書まで作っている
入念な押し貸し詐欺の場合、貸借契約書までしっかり作っていることもあります。これがあると何が有利(ヤミ金にとって)なのかというと―。
- 電話やメールの履歴はないが「本人が事務所に来て、直接書いた」といえる
- これだと、最短当日のアリバイが本人にない限り
- 「行った、行ってない」の水掛け論になる
- この点については、裁判でも真偽が判明しない
…という点です。頭脳的なヤミ金はこれをちらつかせて「裁判に持ち込んでも、あんたが直接出向いてきた以上(本当は出向いてない)、メールや電話の履歴を盾に勝負するのは無理でっせ」というように、圧力をかけます。
この場合「契約書の筆跡鑑定」がカギになるのですが、これにしても―。
- 本人が「最短当日、指を怪我している」と申告した
- だから、左手で書いた
- だから、今の筆跡と違っている
などとヤミ金側が主張したら、これが「嘘である」と証明するのも、また難しいわけです。もちろん、裁判所は両者の主張を見て「おそらく被害者の方が正しい」という判断はしてくれるでしょう。しかし「裁判が面倒になる」というのは確かです。
というように「裁判したら、面倒なことになりまっせ」と言ってヤミ金が圧力をかけると「その分のストレスと、自分の時給を考えたら、5万円くらい払うか」と思って、払ってしまう人が結構いるのです。
押し貸し詐欺には、どう抵抗すればいいのか?
押し貸し詐欺の対処法は―。
- 日頃から、銀行口座やクレジットカードの履歴をよく確認しておく
- おかしい振り込みがあったら、法テラスなどの相談窓口に相談する
…ということです。で、法テラスの弁護士さんなどが「警察に通報しておけば、その5万円はそのままもらって大丈夫ですよ」などとアドバイスしてくれます。
アドバイスがどんな内容になるかはケースバイケースですが、ヤミ金が一番恐れるのは警察沙汰であるということを考えると、「事前に警察に通報しておく」というのは、効果的なのです。
実際、押し貸しにしても普通の高金利の融資にしても、ヤミ金は「かなりの確率で貸し倒れになる」というのを、最初から計算しています。多少貸し倒れになっても、「他の人の利息でカバーできる」だけの暴利をとっているので、問題ないのです。
(この辺は『仁義なき回収』などの本にも、詳しく書かれています。彼らが割と簡単に「この件は焦げ付き」と見切りをつけて、放棄するシーンがよく出てきます)
3-3.「アルバイト」詐欺
「アルバイト」詐欺の手口は、下の通りです。
- 「カードローンの、顧客満足度調査をしている」と、声をかける
- 「実際に無人契約機で申し込みして、その感想を教えて」と言う
- で、引き受けると普通にキャッシング審査を受け、カード発行をする
- 「そのカードを渡してほしい」「暗証番号も教えて」と言う
- ↑(調査のため、という理由)
…で、当然ですがこのカードと暗証番号をつかって、限度額いっぱいまで引き出されるということです。普通のサラリーマン・OLの場合「30万円」程度はもらえることが多いので、「被害額30万円」ということですね。
こうしたアルバイト詐欺は「高額報酬」で被害者を釣ることが多いです。
- 申し込みにかかる時間は、最短で30分
- それで1回当たり5万円の報酬です
…というようなやり口です。当然ですが、たかが満足度調査で、ここまでのお金を出す会社は、どこにもありません。
社会経験がある程度ある人ならいいのですが、まだ人生経験がない学生などが、よくこの被害に遭います。キャッシングのアルバイト詐欺に限った話ではありませんが、「美味しい儲け話」は大抵裏があるので、くれぐれも注意してください。
(ちなみに筆者は、カンボジアで有名な「ブラックジャック詐欺」に騙されました。笑 「イカサマ賭博で一緒に相手をはめて、たくさん稼ごう」と誘われる手口です。まあ、完全に自分が悪いのですが。笑)
以上、紹介屋以外の手口も含めて、カードローン・キャッシングに関する詐欺の手口や、その対策・現状などをまとました。こうした情報を少しでも多く発信することで、彼らがその仕事をやりづらくなるはずです。
また、そうした仕事から足を洗ってまともに働くことは、長期的に見れば彼ら本人にとっても利益になるはずです。そうした意義を考えて、この記事を書かせていただきました。
4.参考文献&サイト一覧
- 読売新聞社会部(2003)『ヤミ金融』中央公論新社
- 紹介屋を使ったヤミ金の手口、都道府県の登録が簡単にできること、などで参考
- 笠虎崇(2010)『サラ金全滅―過払い金バブル狂乱』共栄書房
- 「弁護士は、法律を使ったヤクザ」という消費者金融社員の言葉を参考
- 青木雄二(2002)『オモテ金融―ショーミの話が、銀行は“背広を着た金貸し”なんや』徳間書店
- 「銀行や弁護士を、過剰に信用してはいけない」という点で、参考
- 三田紀房(2013)『インベスターZ(1)』講談社
- 第6話「魔法の富」
- 「銀行トハ體裁(テイサイ)ノ良イ金貸シ」 の言葉を引用
- 宇都宮健児(2002)『ヤミ金融撃退マニュアル―恐るべき実態と撃退法』花伝社
- 紹介屋やヤミ金への対策として、参考
- Business Journal『紹介屋、顧客リスト…悪徳弁護士たちの“客集め”裏テクニック』
- http://biz-journal.jp/2012/07/post_465.html
- 加谷珪一(2014)『お金持ちの教科書』CCCメディアハウス
- 「交渉は、時間がない人ほど不利になる」点について、参考(下のURLでも読める)
- http://kanemochi.kyokasho.biz/archives/5233(お金持ちの交渉術)
- 法務省「債権回収会社と類似の名前をかたった業者による架空の債権の請求に御注意ください」
- http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa19.html
- 金原猛(2010)『仁義なき回収、堕ちていった女たち―闇金裏物語』文藝春秋
- ヤミ金が、回収の面倒な案件については、割と簡単に諦める件について、参考
- イマゼニ「元・ヤミ金業者が語る取り立ての実態(『仁義なき回収』まとめ)」
- 「3.ヤミ金の取り立ては、割と簡単に引き下がる」の章に、詳細をまとめました