「非免責債権」というのは、「自己破産を申請しても、チャラにならない借金」のことです。一覧にすると―。
- 税金(社会保険料なども含む)
- 罰金(違法駐車などの反則金)
- 民法の扶養義務による支払い(養育費など)
- 請求されている損害賠償(交通事故・詐欺など)
- 雇用契約によって請求されているお金(未払いの給料など)
- 債権者名簿に、わざと記載しなかった借り入れ
…という風です。普通の人に関係あるのは―。
- 税金
- 罰金
- 養育費など
- 損害賠償
でしょう。特に厄介そうなのが、損害賠償ですね。たとえば交通事故で人を殺してしまった場合など、何億円と支払わなければならない場合もありますが、それは免責が認められないということです。
危険な運転を絶対にしてはいけないというのが、あらためてわかりますが、いか、この「非免責債権」について、普通の人のキャッシングと絡めて説明していきます。
税金類は、キャッシングしてでも払った方がいい?
賢い人や、お金に困ったことがある人はすぐに気づいたでしょうが、「税金や年金保険料などは、キャッシングでお金を借りてでも払った方がいい」という説が成り立ちます。
(これが正しいかどうかはさておき、理由を説明します)
- 税金は、自己破産しても払わないといけない
- しかし、キャッシングの借り入れは、払わなくてもいい
- ということは、キャッシングでお金を借りて税金だけ払い
- その後で、自己破産してキャッシングの借り入れをチャラにすべき
…という発想が成り立つわけです。繰り返しますが、これが正しいかどうかは置いておき、「善悪を考えない人間だったら、確かにこうするな」というのはわかるでしょう。
国の取り立ては、一番怖い
このセリフは、『闇金ウシジマくん』に登場するものです。多くの人は「闇金業者の取り立ては怖い」と思っていますが、そのヤミ金の当の本人が「国の取り立てが一番怖い」と言っているわけです。
これは、丑嶋のカウカウファイナンスが税金を取り立てられる…ということもあるでしょうが、それ以上に、彼が多くの人の生活を観察していて「国の取り立てが、一番強力だな」と感じた、ということです。
実際、この非免責債権を見てもわかるでしょう。銀行カードローンや消費者金融はおろか、住宅ローンですら免責が認められるのに、税金のたぐいは一切だめなのです。
- 未払いの給料
- 約束した養育費
- 故意に自己破産申請時に記載しなかった借金
などは、確かに非免責債権になって当然でしょう。民間のお金の場合「このレベル」にならないと、非免責債権にならないのです。
もちろん、これらと同等かそれ以上に、税金が重要というのは確かです。日本という国籍がなければ、私達は海外とのビジネスなども含めて、海外旅行でも何でもできなくなってしまいますから。
だから、「税金が非免責債権になる」というのは当然です。とりあえず自己破産すれば、すべての支払い義務から逃げられるというのは幻想に過ぎない、ということを覚えておきましょう。
税金は最優先で支払う
「借金してでも税金を払う」ことのぜひは置いておき、とりあえず「税金・社会保険料は最優先で支払う」ということは、意識しておきましょう。極端な話、キャッシングやクレジットカードで借りたお金は、最悪返済できなくてもいいからです。
(いいわけではありませんが、とりあえず、自己破産でチャラにすることはできるからです)
本当は「借りたお金は全部返済する」のが鉄則ですが、体を壊したりうつ病になったりして働けなくなった時など、仕方がない場合もあるでしょう。
そういう場合は自己破産していいと、破産法が認めているわけです。そして、「そういう状況ですら認められない」非免責債権に関しては、最優先で支払っていくようにしましょう。
非免責債権と免責不許可事由の違い
非免責債権と免責不許可事由は、よく混同されます。違いは―。
- 非免責債権…重度な内容で、絶対に免責されない
- 免責不許可事由…軽度な内容で、裁判官の判断で免責になることも
ということです。免責不許可事由の内容を一覧にすると―。
- 闇金業者からの借り入れ
- クレジットカードの現金化
- 携帯キャリア決済の現金化
- 特定の債権者だけ、優先して返済していた場合
- ギャンブルの借金
- 浪費・遊興費による借金
- 裁判所の調査に対して、非協力的な場合
- お金を借りるために、嘘をついた場合
- 投資・FXなどの資金として借りた場合
というものです。カンタンにまとめると―。
- 違法業者からの借り入れ
- 浪費
- 投資
- ギャンブル
- 何らかの嘘をついた
ということです。これらも十分重度なのですが、税金の滞納や、従業員への給料の未払いなどに比較すると、軽度ということですね。
1回目なら「裁量免責」の対象になりやすい
これらの「免責不許可事由」の場合、1回目の自己破産だったら、「裁量免責」になりやすいです。これは―。
- 裁判官の「裁量」で
- 本当はダメだけど
- 「免責」を許可する
というものです。免責不許可事由に含まれている時点で、本当は免責にしてはいけないのですが、「裁判官の判断=裁量」によって、特別に許可する、ということです。
一回目の自己破産の場合、多くは裁量免責になります。明らかに悪質な内容の場合はなりませんが、ある程度「よくあるお金がない人のパターンだな」と思えるようなものについては、裁量免責になることがほとんどです。
2度目の自己破産はほぼ無理
逆に、1回裁量免責で自己破産し、借金がチャラになった人が2度目の自己破産をした場合―。これはもう、免責不許可事由だと、認められないことが多いです。
免責不許可事由に該当しない場合はOKのことが多いですが、これについても、2度目の場合は少々厳しくなります。(大体は免責になりますが)
免責になるにしてもならないにしても、人生で2回自己破産するというのは相当なことなので、金銭感覚を根本的に見直した方がいいでしょう。
余談ですが、20世紀を代表する投資家の一人「ジェシー・リバモア」は、その人生の中で4回破産しています。最後は4000億円(当時のお金を稼ぐことの難しさを考えれば、現代の4兆円レベル)の資産を築いた後で、破産しています。
ものすごくジェットコースターのような人生ですが、日本の破産法では、このように4回も自己破産をさせえもらえることはないので、注意してください。
(そもそも、全部免責不許可事由の「投資」ですしね。全然懲りていないのが、何となく笑えますが)