どうしてクレジットカードを持つと借金体質になるのか―。この理由は―。
- 買い物で分泌されるドーパミンによる快感が「くせ」になる
- クレカは、キャッシングよりもイメージが良いので、罪悪感がない
…ということです。以下、詳しく説明します。
- 1.ドーパミンの分泌が癖になる
- └ 1-1.「ドーパミン」とは?
- └ 1-2.なぜ買い物するとドーパミンが出るのか?
- └ 1-3.なんで癖になるのか
- └ 1-4.「良い行動」は癖にならないのか?
- └ 1-5.「リアクタンス」とは?
- └ 1-6.習慣になると楽(人間の行動は習慣が9割)
- 2.クレジットカードの方がイメージが良い
- └ 2-1.日本人のクレジットカード所有率は?
- └ 2-2.消費者金融のきっかけも「クレジットカード」だった
- └ 2-3.研究者の団体も「クレジット」に改名
- 3.参考資料&補足情報
- └ 3-1.参考文献&サイト一覧
- └ 3-2.補足データ…日本人の「20才~64才」の年齢別人口(労働力人口)
1.ドーパミンの分泌が癖になる
1-1.ドーパミンとは?
ドーパミンは簡単にいうと「快感のホルモン」です。動物が子孫を残したり、より強い種になるには「そうなりたい」と思うことが大切です。それを「思わせる」ホルモンということですね。
- 悪く言うと…欲望
- 良く言うと…意欲
ということです。どちらも、科学的には「ドーパミン」がによって引き起こされているわけです。
で、動物の初期設定としては「他の動物より有利になれる行動」をすると、ドーパミンが出るようになっています。それに快感を覚えることで―。
- すべての動物が競争するようになり
- より強い種が生き残る
という「生態系の改善」につながるからです。(これも悪く言うと「弱肉強食」ということですが…)
1-2.なぜ買い物するとドーパミンが出るのか?
買い物によってドーパミンが出る理由は―。
- ネクロフィリア…「新しい刺激」を求める心
- スペリオリティ…優越感。「貧乏な人と違って、私はこれを買える」という感情
- ディペンデンス…依存症。対象は何でもいいのだが「何かに依存することに、快感を感じる」
…というものです。多くの人の場合、特に「ネクロフィリア」「スペリオリティ」によって、買い物をするとドーパミンが出るようになっています。
また、最初はこれらの理由で買い物していたら、いつの間にか「買い物=快感」と体が学習してしまい、「買い物自体に、快感を感じるようになった」という依存症(ディペンデンス)もあります。
1-3.なんで癖になるのか
こうした快感が癖になる仕組みは「強化学習」といいます。簡単に言うと―。
- その刺激が脳に伝わった時、使われた神経回路がある
- 「この神経回路に電気信号が走ると気持ちいい=生存に有利である」と、脳が学習する
- その神経回路を「太く」する(優先的にタンパク質などの栄養を回す)
- 回路が太くなり、そっちにより電気信号が走りやすくなる
- その行動をするのが、ますます簡単になり、ますます快楽になる
…ということです。要は「その行動で使う神経回路が太くなる。だから、ますます簡単&快適になる」ということですね。これが「強化学習」です。
買い物にしても、パチンコなどのギャンブルにしても、この「強化学習」が起きるので、依存症になってしまうわけですね。
1-4.「良い行動」は癖にならないのか?
上の説明だと、下のような疑問を持つ人もいるでしょう。
- 「生存に有利な行動」に快感を覚えるなら
- 「良い習慣」をつけた方が有利なんだから
- そういう行動の方が、むしろ癖になるのでは?
…というものです。実際その通りで、たとえばイチローなどはその典型でしょう。彼の道具や体のメンテナンスは、大リーガーから見ても「修行僧のようなレベル」と言われますが、彼の場合はそうやって真面目に生きる方が、気持ちいいのです。
では、なぜすべての人がこのように「真面目な行動」に快感を覚えないのか。これは「リアクタンス」が原因です。
1-5.「リアクタンス」とは?
リアクタンスは「反発」という意味です。
- 「○○をしなければいけない」と思うと
- 「できなかった時の恐怖」がセットで想像される
- その「恐怖」を受け取った脳は
- 「これは、○○のことを考えたせいだ」と、とっさに思う
- そのため「○○のことを考えないように」してしまう
- 結果、それをやりたくなくなる
…ということです。これは誰でも身に覚えがあるでしょう。
- 夏休みの宿題
- 部活のトレーニング
- 部屋の掃除
- 歯磨き
…などなど、日常生活は「リアクタンスの固まり」と言ってもいいくらいです。
私達は、こういう行動を「したくなくなる」のを「意志が弱いから」と感じてしまいますが、実は違うんですね。義務が発生すると、人間の体は「リアクタンスを感じるようにできている」わけです。
それを知っていれば「ああ、やりたくないなあ…」と思った時も―。
- 自分が「本当にやりたくない」わけではない
- 体のとっさの反応で、リアクタンスが発生しただけだ
…と、分析できるわけです。そうして分析できたら、これらの「良い行動」も、別に苦痛には感じないわけですね。
1-6.習慣になると楽(人間の行動の9割は習慣)
で、このように「良い行動」をとりあえず起こして続けると、それが「習慣」になります。
- 体が「どうやら、これから俺は毎日、これをやらなければいけないらしい」と考える
- 仕方ないので、作業が楽になるように、神経回路を構築しよう…と考える
- 神経回路が作られると、その作業が楽になる
- 一度楽になると、その後はさらに楽になり、さらに回路が太くなっていく
- 結果、人間の行動は「習慣」に支配されるようになる
…ということです。このことは『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』という本に詳しく書かれています。人間の行動の9割は、自分では、毎回考えて頭で行動しているつもりでも、実は「習慣で勝手に」動いているだけなのです。
そのためクレジットカードの買い物などで借金体質になっている人も、「ただそれが習慣になってしまっている」だけなんですね。「本人がもともと、完全にダメ」というわけではないのです。
だから、まず良い習慣をつけるというのが一番大事なわけです。そして、この習慣(強化学習)というのは「一度でも始めて成功すると、そこから自然と回り始める」ものです。
ということで、その「好循環が始まる第一歩」を、まず踏み出すようにしましょう。これは借金体質を卒業すること以外でも、すべてにおいて言えることです。
2.クレジットカードの方がイメージが良い
2-1.日本人のクレジットカード所有率は?
日本人は、かなりクレジットカードを持っています(使ってませんが)。データをまとめると―。
- 総保有枚数…3.2億枚
- 20才~64才の人口…7090万人(2015年11月時点)
- 1人当たりの保有枚数…4.51枚
…となります。よく「1億2000万人」で割っている記事がありますが、それは間違いです。(クレジットカードを持てない年齢層は、除外しないといけないですからね)
ということで「クレジットカードを持てる年齢の人」は、「1人当たり4.5枚のクレジットカードを持っている」ということになります。つまり、単純計算した保有率は「100%」どころか「450%」ということですね。
(もちろん、一人で10枚持っているような人もいるわけですが。…いるのか?)
このように「クレジットカードなら、みんな持っている」ということで、「キャッシング・消費者金融よりも、断然イメージがいい」わけなんですね。
2-2.消費者金融のきっかけも「クレジットカード」だった
もともと、消費者金融の歴史をたどると、下のような流れになっています。
- 特定の商品(ミシンなど)で、メーカーが直接「分割払い」を許可した
- 信販会社が「用途がわかっている買い物」に限り、融資を始めた
- どんな買い物にも使える「クレジットカード」が登場した
- 「買い物以外」にも使える「キャッシング(消費者金融)」が登場した
…という流れです。完全にこのように「綺麗に」なっているわけではなく、実際には多少の重複や前後があります。しかし、大体こういう流れです。
で、これを見てもわかる通りそもそも、「お金を借りる」という行為自体が「クレジットカード」(の買い物)から始まったわけですね。「歴史が長い」分、当然信用度も高いわけです。
2-3.研究者の団体も「クレジット」に改名
消費者金融の世界では、早稲田大学による研究所として消費者金融サービス研究所」という団体が、長年活躍されていました。しかし、この団体も「消費者金融」という言葉のイメージが悪くなったためか、改名しています。
2010年から現在の「クレジットビジネス研究所」(IRCB)になっているのですが、これを見ても「クレジットカードの方がイメージが良い」というのが、あらためてわかるでしょう。
実際「ネーミング」というのは侮ってはいけません。たとえば「女子会」という言葉は、「笑笑」などを展開する「モンテローザ」の社長・大神輝博氏が考案したものです。この「女子会」というネーミング一つで「女性だけの飲み会」がカルチャーとして根付いた…ということは、知っての通りです。
消費者金融の世界でいうなら―。
- アコムの「むじんくん」の絶妙なネーミングで、自動契約機が爆発的に普及した
- 「サラ金」という言葉のイメージが悪化したので、「消費者金融」になった
…という例もあります。後者については、その「消費者金融」という単語すらイメージが悪化し始めて、さらに別の呼び名を模索中なわけですが。
(カードローン・リテール金融・クレジットビジネスなど)
何はともあれ、このように「名前の力」「ネーミングの力」というのは、馬鹿にできないんですね。だから早稲田の消費者金融サービス研究所も改名されたわけですし、同じ借金でも「クレジットカード」だと、みんな安心するということです。
(この安心感のせいで、クレジットカードによる破産がいつまでも減らないのですが…)
…何はともあれ、このように「消費者金融よりクレジットカードの方がイメージが良い」というのは確かです。そのため―。
- 「借金をしている」という自覚があまりない
- どんどん使って、借金体質になってしまう
…という問題を抱えているわけですね。
以上、「クレジットカードによって、借金体質になりやすい理由」を、まとめました。脳科学的な理由、クレジットカードの発達の歴史なども絡めて、割と多方面から解説できたかと思います。
何はともあれ、こうした理由で「借金と思わず、借金してしまう」というのがクレジットカードの怖さ。便利なアイテムですが、くれぐれも使いすぎに注意してください。
3.参考資料&補足情報
3-1.参考文献&サイト一覧
- クレジットカードおすすめ比較隊 | ランキング・還元率でクレカ調査!
- 岩崎一郎(2013)『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』クロスメディア・パブリッシング
- 「人間の行動の9割は習慣に支配されている」という点で参考
- ケリー・マクゴニガル、神崎朗子・訳(2012)『スタンフォードの自分を変える教室』大和書房
- 「正しいことをやりたがらない」人間の心理全般について、参考
- 総務省統計局「人口推計 2015年11月版」
- http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201511.pdf
- クレジットカードの対象である「20才~64才」の人口について参考(正確には、クレカは18才から持てるが)
- 早稲田大学・クレジットビジネス研究所(IRCB)
- http://www.waseda.jp/prj-ircfs/
- 団体の改名について、参考
- 海宝明(2012)『リテールバンキング今昔物語』金融財政事情研究会
- 「商品の分割払い」→「信販会社が絡む割賦販売」→「クレカ」という歴史について参考
- 2010年「ユーキャン新語・流行語大賞」
- http://singo.jiyu.co.jp/nendo/2010.html
- 「女子会」の流行語が、モンテローザから始まったことについて、参考
- フェアカード「日本でのクレジットカードの利用状況と市場規模」
- http://www.faircard.co.jp/market/
- 「日本人のクレジットカード総保有枚数が3.2億枚」というデータ」を参考
- Wikipedia『ドーパミン』
- 「ドーパミン」の正確な定義、そもそも何かについて、参考
3-2.補足データ…日本人の「20才~64才」の年齢別人口
年齢層 | 人口 |
---|---|
20~24 | 624万人 |
25~29 | 651万人 |
30~34 | 730万人 |
35~39 | 832万人 |
40~44 | 979万人 |
45~49 | 872万人 |
50~54 | 802万人 |
55~59 | 755万人 |
60~64 | 845万人 |
合計 | 7090万人 |