キャッシングの歴史

来店不要のキャッシング審査は便利だが… ~消費者金融の対面審査の歴史・意義~

来店不要のキャッシング審査

「来店不要で審査できる」というのが、最近の消費者金融のキャッシングの売りです。これは確かに便利なんですが、本来、消費者金融の審査は「対面審査」が基本だったんですね。

これは過去の話でなく「できれば、現在もそれが理想」なのです。実際には―。

  • 大手は、もう利用者が増えすぎたので無理
  • そもそも、利用者の方も「対面審査不要」で借りたがっている

ということで、今後も大手の消費者金融で対面審査が主流になることはないでしょう。また、なる必要もありません。ここでは、「大手の消費者金融は、昔どんな対面審査をしていたか」という歴史を紹介することで、「今でもそれができる、中小業者の存在意義」を説明します。

目次

1.昔の消費者金融の「対面審査」のすごさ

1-1.支店長は「部下と客のやり取り」だけで審査できた

支店長レベルになると「お客が店に入ってきた瞬間、服装や態度で、融資できる人間かどうかわかった」といいます。これは「支店長が勝手に決めた」わけではありません。

その後、店員さんが実際に審査して―。

  • 他社借入
  • 年収
  • 職業

などの情報をすべてチェックした上で「これはダメだ」と判断する、ということです。こういう店員さんの「しっかりした審査」と、店長が「お客を見た瞬間の印象」は、大体一致したというんですね。

また、第一印象だけでは判断できなかった場合も、その後「審査する店員とお客さんのやり取り」を聞いていればわかったといいます。もちろん店長はいろいろ他の業務で忙しいので、ずっと聞いているわけではありません。しかも「多数の店員の審査」を、同時に盗み聞きしているわけです。そういう―。

  • 断片的な情報だけ
  • しかも、個人信用情報の照会などはできない
  • 書類も見れない
  • ずっと話しているわけではないので「些細な仕草」などを見るチャンスがない

という状態でも、「これらの情報をすべて持っている」審査担当の店員さんと、同レベルで審査できたといいます。

当時(95年頃)の大手の消費者金融の場合、大体1日20人~40人が来店で申し込みしていました。これらの人の「最終審査」(融資額の決定)は店長がするわけです。

そういう「膨大な数」をこなしているうちに、当時の消費者金融の店長には「独特の審査のカン」が養われていた…ということですね。

1-2.返済不能になる利用者の、見分け方

昔の消費者金融では、どのように「返済不能になるお客さん」を見抜いたのか。たとえば下のような具体例があります。

  1. 「いくらご利用ですか?」と聞かれ「そんなの、いくらでもいいさ」と答える
  2. 若いのに、ブランド物の時計や指輪をしている
  3. 勤務先の名称が「○○興業」「××商事」などと、曖昧な名前
  4. ワイシャツの衿(えり)が汚れている
  5. 前歯が欠けている
  6. 在籍確認で本人が留守だった時、勤務先の人が出先を把握していない
  7. 同じく在籍確認で、勤務先の人の口の聞き方がぞんざい

…というものです。それぞれ理由を説明すると―。

  1. こういう見栄っ張りは破産する。それに、サラリーマンの給料などたかが知れている
  2. 同じく、こういう金銭感覚の人は破産する
  3. 曖昧な名前の勤務先は「ヤクザのフロント企業」の可能性がある
  4. シャツが汚いのは「奥さんとうまく行っていない」ことが多い
  5. 前歯が「抜けている」はともかく「欠けていて、しかも放置」はおかしい
  6. 勤務先の人が出先を確認していないということは、職場で重要視されていない
  7. これも、やはり職場で軽んじられている証拠。あるいは職場自体がもう長くない

…ということです。ちなみに「前歯が欠けている」については、『ナニワ金融道』でも「特にダメな貧乏人」の顔として、たまに出てきます。「人は見た目が9割」については賛否両論があるでしょうが、少なくとも「前歯が欠けている」については、途上国でもない限り、少なくとも「経済力については」信用されなくて当然でしょう。


 「在籍確認した時の、職場の人の反応」について

在籍確認をした時に、職場の人が出先を把握しているかについても、かなりいいポイントを見ていると思います。

  • 「どうでもいい人」だから、誰も意識していない
  • 職場での評価は悪くないが、本人が報連相をせずに、適当に行動している

という2通りの原因が考えられます。前者は当然クビになるリスクがあります。後者については、たとえ「エース的存在」だったとしても、こういう人は―。

  • 職場で喧嘩して、クビになる可能性がある
  • 返済についても、自分の判断で勝手に延滞することがある

…という傾向があります。もちろん、芸術家や起業家の場合、こういう人が成功することはよくあるのですが、キャッシング審査では、そういう「スケールの大きさ」はどうでもいいのです。大事なのは、「当たり前のことを、当たり前にできる人かどうか」ということなんですね。

野球でいうなら「送りバントと守備」をしっかりしてくれる人だけが欲しいのです。だから「職場の人が、出先を把握していない」というのは、上のどちらの理由でもNGなんですね。

1-3.「保険証の針穴」で、悪質な顧客をチェック

これは「個人信用情報機関がなかった頃、代わりに考え出した方法」です。説明すると―。

  • 業者同士で集まって、打ち合わせる
  • 「アコムは右上、アイフルは左下」…というように
  • 保険証の「穴を開ける場所」を決める
  • そうすれば、お客さんが保険証を提出するだけで
  • 「どこから借り入れしているか」がわかる

ということです。「金額まではわからない」と思うでしょうが、それは、電話して聞けばいいのです。「どこで借りているか」もわからない状態では、この確認もできません。しかし、借入先だけでもわかれば、この確認ができるんですね。

かなり原始的なやり方ですが、個人信用情報機関が登場する1970年代序盤までは、こういう方法でしか、他社での借り入れを確認できなかったのです。

…というよりも、現代の我々からするとむしろ「こんな方法があったのか」と、感心するレベルではないでしょうか。

1-4.「嘘をついた客」に対しても、臨機応変に対処

情報が管理されている「監視社会」の現代に対して、昔の情報管理は「テキトー」でした。だから「嘘をついてもバレないだろう」と考えるお客さんは、今より遥かに多かったんですね。

だから、申し込んできたお客さんが、嘘をついていた…というのは日常茶飯事でした。今の消費者金融だったらそれだけで「虚偽の申し込み」ということでアウトですが、当時はOKになることもあったんですね。

というと、短絡的な消費者金融アレルギーを持っている人は、すぐに「過剰貸付だ!」と騒ぐでしょう。そうではないのです。

  • その人は、お金がなくて困っている
  • そして、こちらは調査によって「正しい情報」を掴んだ
  • そして、こちらは「この人は、いくらまでなら返済できるか」を予想できる
  • だったら、その金額を貸してあげればいい

ということです。つまり「嘘をついた→即アウト」と決めつけるのではなく、一呼吸おいて「双方にとって、ベストの方法を考える」ということです。

2.臨機応変&人間的な審査によって、銀行を超えた

2-1.消費者金融と銀行の、個人融資に対する見方の違い

「消費者金融が儲かったのは、銀行と違って悪どい商売をしていたからだ」と思っている人は多いです。しかし、それは間違いです。

そもそも、銀行にとって「個人向け融資」というのは「貸し倒れのリスクが大きく、一人あたりの融資額も小さいので、全然利益にならない」サービスでした。だから、手をつけなかったのです。

特に「貸し倒れのリスク」が一番大きかったのですが、消費者金融はそれを「とことん正確に、相手を審査する」ことでクリアしたのです。つまり、上の「虚偽」のケースだと、銀行は「嘘をつくような奴は信用できん。落とせ」といって、全部排除していたわけです。それで「売上が減る」わけですね。

しかし、消費者金融の場合は「嘘をついたけど、この人は20万円までは返済できる」と正確に見抜いた上で、下のように言い聞かせて融資していたのです。

  • 「山田さん、あなた嘘ついてたでしょ。嘘ついてもこっちはわかるからダメですよ」
  • 「50万は無理だけどね。山田さんの実力だったら、20万円までは融資できますよ」
  • 「代わりに、返済は絶対にしっかりしてくださいよ」
  • 「山田さんだって、その方が延滞利息がかからないし、得だからね」

という風です。要は「人間同士の貸し借り」だったわけですね。

2-2.「ダメな客」しか来ないので「できるだけ良い所を探す」ようにした

当然ですが、個人向け融資でお金を借りようとする人は、みんな「お金がない人」「だらしない人」だったわけです。銀行はそれを知っていたので―。

  • こんな連中を相手にしても、時間のムダ
  • それより、不動産を持っている企業や金持ちに融資した方がいい

と考え「不動産担保」の融資に邁進していたんですね。特にバブル期は完全にそうでした。

で、そういう「優良顧客」をすべて銀行に取られ、消費者金融に来るのは「ダメなお客さん」だけだったのです。それでも、彼らに融資しない限り、自分たちの仕事は成り立たない―。という「切羽詰まった状況」が、消費者金融の中で―。

  • 申し込み者を簡単に見限らない
  • 「融資に値する部分」をできるだけ見つける
  • そして、貸す時に強めに注意しておく

…という文化を生み出したのです。そして、遅延したら翌日には必ず電話しました。

これは「貸し倒れを出さない」という業者側の事情ももちろんあります。しかし「厳しくするのは、利用者のため」でもあったんですね。

  • 早く返済すれば遅延利息がかからない
  • そもそも「遅れる」という習慣は、本人の人生のためによくない

ということです。私自身、過去に多重債務者だったのでよくわかりますが、「多重債務者の生活は、改めなければいけない悪習慣だらけ」です。これが社会からの強制力によって「半自動的に矯正される」というのは、最初はきついかも知れませんが、長い目で見たらとても幸せなことなのです。

3.問題があったのは、一部の業者&ヤミ金のみ

ここまでの内容を読んで―。

  • 消費者金融を贔屓しすぎだ
  • 実際に、過剰融資や過酷な取り立てが問題になっただろう

という反論があるでしょう。これについては―。

  • 報道された「問題行動」は、ほとんど「ヤミ金」のもの
  • 大手業者で問題があったのは「武富士」「商工ファンド」など一部のみ
  • もう一つ、大手で問題とされたアイフルは「無実」が最高裁で証明された
  • 車でもバイクでもお酒でも「間違って利用して、道を誤る」人は必ずいる

…ということを知っていただきたいです。(以下、それぞれ詳しく説明します)

3-1.報道されたのは、ほとんど「ヤミ金」の事件

消費者金融(サラ金)が徹底的にバッシングされた2006年頃。報道された事件の多くは、大手の消費者金融ではなく、ヤミ金が起こした事件でした。

たとえば、貸金業法改正のきっかけとなった「八尾市ヤミ金心中事件」。これは今でこそ「ヤミ金」と必ずつけて呼ばれていますが、当初のメディアでは「老夫婦一家心中事件」と表現されることもありました。

で、この事件を報道した後に、「最近サラ金による過剰融資・強引な取り立てが問題になっている」などと報道されたら「八尾市の事件は、サラ金が起こした」と勘違いする視聴者がほとんどでしょう。

事実、2009年時点でも「ヤミ金って、アコムとかプロミスのことでしょ?」と勘違いしている人は、かなりの人数存在したのです(『貸せない金融』より)。

しかし、この「八尾市ヤミ金心中事件」も、当時報道されたその他の「サラ金地獄」も、実はほとんどが「ヤミ金融のもの」だったんですね。

3-2.大手業者では「武富士」「商工ファンド」のみ

話を少々ややこしくするのが―。

  • 武富士
  • 商工ファンド

の存在です。この2つはどちらも東証1部に上場している「大企業」でした。そして、この2社に関しては、確かに多くの人が持っているイメージのような―。

  • 高金利
  • 過剰融資
  • 過酷な取り立て

という「3K」「サラ金三悪」を満たしていたのは確かです。*「高金利」だけは、他の大手も同じでしたが、すべて「法定金利の範囲内」だったので、問題は何もありませんでした。

で「武富士」「商工ファンド」の2社が「ヤミ金融のような取り立て」をしてしまったために大手の消費者金融がすべて、同じような目で見られるようになったわけですね。

武富士については多くのジャーナリストや被害者の会、元社員などが、その実態を多数の書籍で明かしています。毎日時間区切りでノルマが貸せられ、少しでも未達で終わると「ゲキ」という、暴力的な電話やメールが、本部から来ます。(『武富士の闇を暴く』)

言葉の暴力だけでなく、肉体的な暴力も多くあり、武富士が「研修用」に借りていた一軒家では「未達会議」が行われる度に、近所にも鳴り響くような怒号、平手打ちの音が聞こえていた―、というくらいです。(『銀バエ 実録武富士盗聴事件』)

また、商工ファンドについては「腎臓売れ」「目玉売れ」と聞いたら「ああ」と思う人も多いでしょう。

  • 「腎臓売らんか。300万で売れるで」
  • 「目ん玉は2つも要らん。1つ売れ」

というような過酷な取り立てをしたことで、問題になった会社です。商工ファンドというのは固有の社名で、事業用融資(走行ローン)をやっていた会社です。しかし―。

  • 商工ファンド
  • 商工ローン

という名前がよく似ているせいで、この事件以来「商工ローン・事業ローン」のイメージが、すべて悪くなってしまったんですね。

  • 個人向け融資…武富士
  • 事業向け融資…商工ファンド

という二大企業が、それぞれイメージを悪化させてしまったわけです。

3-3.アイフルは「無実」が証明された

2006年頃、武富士と並んで叩かれていたのが「アイフル」です。これは無実だったのですが、当時、アイフル社員による「脅迫的な取り立てのテープ」の音声が、メディアでは繰り返し流れていました。

  • 「どうせサラ金なんだよ!所詮サラ金!」
  • 「金融監督庁でも、野球の監督でも何でも連れて来い!」

というテープですね。記憶している人も多いでしょう。当時からアイフルは「これはアイフル社員によるものではない」と無罪を主張していましたが、一審(地方裁)では有罪判決を受けました。

しかし、その後「二審(高等裁)」では「アイフル社員のものとは断言できない」という判決が下り「無罪」となりました。

その後、原告は控訴して最高裁に持ち込みましたが、最高裁は「審理するまでもない」ということで「棄却」しています。これで「アイフルは無実の罪だった」ことが完全に確定したわけです。


しかし、これは報道されなかった

アイフルの無罪が確定したのは2009年ですが、このことはメディアでほとんど報道されませんでした。新聞で小さく、申し訳程度に「普通のニュース」にまぎれて掲載されただけです。

「脅迫テープ」の時には「アイフルのものと確定したわけではないのに」、まるで「確定している」かのように報道する。そして、無罪が確定したら、それを報道せずに沈黙を決め込む―。というのが、この一連の報道に関する、メディア(特にテレビと週刊誌)のやり方でした。

無罪を報道しなかったのは当然でしょう。これを報道したら「よく確認もせずに、決めつけた報道をした」という「自分たちの非」を認めることになるからです。

…というように、大手の消費者金融の中で、確かに「武富士・商工ファンド」は有罪でしたが、「アイフルは無罪」だったんですね。「5日間の全店舗営業停止」という処分もありましたが、これは本来なら「全店舗停止になるような内容ではない」軽度な内容だったのです。(サラ金全滅)

アイフルは「銀行買収」発言で叩かれた

アイフルがこのように「わずかな落ち度しかない」のに過剰に叩かれたのは、福田社長が「銀行を買収したい」と発言したため。これを聞いて、銀行やその関連の政治家が「サラ金が銀行を買収したいとは、何事だ!」と怒ったわけですね。

福田社長は、直接「銀行を買収したい」と言ったわけではなく―。

  • 自社(アイフル)が銀行化したら、資金調達のコストが下がるので、より低利で融資できる
  • そのためには、①提携、②銀行と共同で新銀行の設立、あるいは…
  • ③既存の銀行を買収する…という方法がある

と発言したのです。直接「買収してやる」と意気込んだ発言をしたわけではなく、あくまで「3つの選択肢」を示しただけだったんですね。

しかし、当時のアイフルは、地方銀行だったらすでに買収できるレベルに達していました。成長率では大手の消費者金融の中でもトップを走るレベルで、アコム・プロミスと違い、銀行の傘下に屈する気がまったくない…。ということで、銀行サイドが脅威に感じたんですね。

もちろん、営業停止の原因になった「5店舗の違反行為」については、確かに問題がありました。しかし、金融庁が自ら「一罰百戒」(見せしめのこと)と言った通り、アイフルの行政処分は完全に「全ての消費者金融に対する見せしめ」で、不当に厳しいものだった…、ということは知っておいていただきたいです。

3-4.どんな商品でも「使い手次第」

そもそも、キャッシングでもそれ以外のサービス・商品でも、すべて「使い手次第」です。「キャッシングは人を破産させるからいけない」というなら―。

  • 自動車…人が死ぬ
  • 包丁…強盗が出る
  • ロープ…首吊り自殺が発生する
  • 電車…鉄道自殺が発生する
  • カミソリ…リストカットに使われる
  • 睡眠薬…服薬自殺に使われる
  • お酒…アル中を生み出す
  • テレビゲーム…廃人を生み出す

…など、どれだけでも「イチャモン」をつけられるでしょう。確かに「消費者金融」というサービスはこれらよりも少々「社会的意義を、強く意識しなければいけない」業種であるのは間違いありません。

しかし「破産者が出るから、消費者金融はよくない」という理屈は、根本的には上にあげた例と全く一緒…というのは理解していただきたいです。

*ちなみに、日本の貸金業の歴史は、すでに「弥生時代から」始まっています。「弥生時代~現代」までをげでまとめたので「消費者金融の存在意義」に興味がある方は、下の記事を読んでいただけたらと思います。↓

借金史 ~日本のキャッシング・カードローン・クレジットカード・貸金業の歴史 まとめ~

4.「消費者金融の対面審査」まとめ

4-1.「来店不要」は確かに便利だが…

「来店なしで審査できる」というのは、確かに利用者にとって非常に便利です。

  • 時間がかからない
  • 交通費もかからない
  • 僻地でも申し込める
  • 恥ずかしくない

…という風に「どう考えてもメリットだらけ」です。かくいう私も、プロミスなどの消費者金融の利用は、すべて「ネット申込み・電話審査」のみでした。「来店しろ」と言われたら、他の業者を当たっていたでしょう。

また、アコムが「むじんくん」で起こした自動契約機の革命などは、経営学のすぐれたケーススタディとして、「プロジェクトXに採用されてもいいレベル」と思っています(もちろん、イメージの問題があるので無理だったでしょうが、レベル的にはそのくらい凄かったのです)。

…ということで「来店不要の審査」というのは、すぐれたサービスだと思っています。

4-2.本来の消費者金融は「対面審査・融資」であるべき

ただ、理想を言うなら―。

  • 消費者金融、というより「個人金融」は
  • 「どうしてもお金に困った時」だけ
  • 「絶対に必要な、最小限の金額」だけを
  • 「どうやって返済するつもりか」しっかり相談した上で
  • 「人間同士の約束」として、貸す

…というのが、あるべき姿なんですね。実際、今も中小のキャッシング業者(いわゆる「街金」)は―。

  • 対面審査
  • 対面融資
  • 対面返済

の「3つの対面」を、鉄則としている所がいくつかあります。それは「回収しやすくするため」というのもありますが、結果的に早期に破産を食い止めることにもなり、消費者金融のあるべき姿を維持しているんですね。

4-3.ただ「経済的な貢献」にも意味はある

上のように書いたものの、アコム・プロミス・アイフル・SMBCモビットなどの大手の消費者金融が、今さら「対面融資を中心」にすることはできないでしょう。また、する必要もありません。

  • 「審査を簡単に」して
  • 「よりたくさんの人」に融資することは
  • 「経済的に、大きな貢献」である

…というのも事実です。バブル崩壊後、外資がまともに投資してくれなかった日本にあって、ほぼ唯一外資がどんどん融資してくれたのが「消費者金融業界」だったのです。フォーブズの長者番付の、日本人の上位を、消費者金融の社長が独占していたのだから、それも当然でしょう。

そういう「経済的な貢献」は、「融資の自動化」によって実現されたので、どちらがいいのか悩むところです。

4-4.日本人の金融リテラシーを高めることは、必ずプラス

ただ一つ確かなことは、「日本人の金融リテラシー」は、絶対に高めた方がいいということ。そうすれば―。

  • キャッシング業者が、同じように宣伝していても
  • 「自主的に破産を防げる」人が増える
  • キャッシング業者は「融資金額が減る」かも知れないが
  • 代わりに「貸し倒れ」も減る
  • トータルでは「プラマイゼロ」になる

…ということです。もちろん「完全にプラマイゼロ」にできるかはわかりません。「多少マイナス」になる可能性もあるでしょう。

しかし、下のような効果も見込めます。

  1. 「貸し倒れコスト」がなくなる
  2. 今までより「低金利」でも融資できるようになる
  3. その低金利を見て「今まで消費者金融から借りなかった人」が、興味を持つ

…ということです。要は「客層が、もっと上質になる」ということですね。どのくらいのレベルでこの変化が起きるかはわかりません。しかし、程度はともかく「こういう変化が起きる」ことは間違いありません。

つまり「金融リテラシーが上がることによって、消費者金融の売上もむしろプラスになる」可能性はあるのです。

仮に売上がプラスにならなくても、大事なこと

仮に消費者金融の売上のプラスにならなくても、やはり「日本人がお金で悲劇に遭わない」ためにも、「金融リテラシーを高める」ということは重要です。これは、消費者金融やクレジットカードの未来を議論する時、専門家が必ず指摘することです。

(『理解されないビジネスモデル 消費者金融』『リテール金融のイノベーション』など多数)

4-5.具体的に、どのような教育をするのか?

たとえば、個別の具体例をあげると、下のようなことは「義務教育」で教えるべきです。

  • 「保証人」と「連帯保証人」の違い…連帯保証人は「本人」とほぼ同じ意味
  • 「白紙委任状」の意味…これにサインすると、後から何を書かれても文句を言えない
  • 「消費者金融で1万円」借りた時の、1ヶ月の利息…150円。この掛け算で、常に利息計算できる

…という風です。「多重債務を防ぐための金融教育」は、この業界ではかなり重視されていて「それだけに的を絞った書籍」も出版されています。(『多重債務リスクと金銭管理教育』など)

先にも書いた通り―。

  • 貸金業は「弥生時代からずっと続いていた」ものであり
  • 歴史の中でも現代でも「人々の生活の窮地を救う」場面は、たくさんあった

…ということです。先に上げた「自動車・包丁・睡眠薬」などの例のように、その「商品・サービスそのもの」が良い悪いではなく「使い方の問題」なのです。だから、その「使い方」が正しくなるよう、「日本人の金融リテラシーを高める」教育が重要だと、私は考えます。


以上、「消費者金融の対面与信の歴史」から始まって、キャッシングやクレジットカードなど、「貸金業の本質」につながるお話をしました。表面的なイメージで決めつけて議論をするのではなく、こういう視点も参考にしていただけたらと思います。

5.参考書籍・サイト一覧

5-1.参考書籍・一覧

  • 岩田昭男(1996)『消費者金融 大躍進の秘密』ダイヤモンド社
  • 小林幹男(2009)『「貸せない」金融』角川SSコミュニケーションズ
  • 増原義剛(2012)『「弱者」はなぜ救われないのか』きんざい
  • 須田慎一郎(2006)『下流喰い―消費者金融の実態』筑摩書房
  • 武富士被害対策全国会議(2003)『武富士の闇を暴く―悪質商法の実態と対処法』
  • 山岡俊介(2004)『銀バエ 実録武富士盗聴事件』創出版
  • 笠虎崇(2006)『アイフル元社員の激白』花伝社
  • 笠虎崇(2010)『サラ金全滅―過払い金バブル狂乱』共栄書房
  • 藤沢久美・片野佐保・真水美佳・川島直子(2008)『理解されないビジネスモデル 消費者金融』時事通信出版局
  • 杉浦宣彦・大槻奈那・伊藤亜紀・浅見淳(2013)『リテール金融のイノベーション』きんざい
  • 奥村美代子・谷村賢治(2002)『多重債務リスクと金銭管理教育』晃洋書房

5-2.参考サイト・ブログ一覧

  • 橘玲「書評 『「弱者」はなぜ救われないのか」(BLOGOS)
    http://blogos.com/article/46221/
  • 笠虎崇『マスコミ捏造のアイフル脅迫テープ』(公式ブログ)
  • http://kasakoblog.exblog.jp/12002446/

  • アイフル被害対策全国会議『相談員脅迫損害賠償事件の口頭弁論が行なわれました。』
    http://www.i-less.net/news/051025.html
  • カバログ『「アイフルの脅迫電話」はだれが掛けたのか?』
    http://blogs.yahoo.co.jp/kwitknr/34061196.html

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