個人間のお金の貸し借りにも「上限金利」はあります。「実質年率109.5%」というもので、消費者金融の上限金利が「18%」なのと比較すると大体「6倍~7倍の超高金利です。
(ちなみに、質屋は今もこの金利での融資が認められています)
出資法第5条『高金利の処罰』
この「109.5%」という上限金利を決めているのは、出資法の第5条で「高金利の処罰」という項目です。内容を要約すると―。
- 金利は、年率109.5%まで
- うるう年は2月29日があるので、年率109.8%まで
- 1日あたりは「0.3%」まで
- これを超えた場合は、5年以下の懲役
- もしくは、1000万円以下の罰金
- もしくは、その両方を科す
- 利息を受け取っていなくても、要求しただけで有罪
ということです。よく個人間の金利の上限で―。
- 109.5%
- 109.8%
という2つの説がありますが、これは、一応両方正解なんですね。109.8%の方は「うるう年」のものなのです。
年率109.5%で借りると、利息はどうなるのか?
この「実質年率109.5%」という上限金利で借りると、利子はどのくらいになるのか。100万円借りた場合で、それぞれの期間の利息は、下のようになります。
- 1日…3258円
- 1週間…2万2812円
- 1ヶ月…9万1250円
- 1年…109万5000円
これは「利息だけ」です。1ヶ月で「月給の半分」くらいの利息が発生するんですね。
1年に至っては「借りた金額以上」の金額を利子だけで払うということです。109.5%という金利が、いかに暴利かわかるでしょう。
実際にこの金利が課されることは、ほぼない
このように暴利なのに、なぜ出資法で認められているのか。これは実際には、適用されることがほとんどないからです。
- 出資法5条第2項では
- 「業者」の上限金利について
- 「年利20%」を上限としている
というのが理由です。つまり「個人間」では109.5%までOKでも、そのすぐ次の項で「貸金を業とするもの=業者」については、「20%までにしろ」というルールが書かれているんですね。
ということで、出資法でこういう最高金利になっていても、実際にはこれが適用されることは「質屋以外にはない」ということです。
質屋はこの最高年率でも、なぜ問題ないのか?
質屋が問題ない理由は、下の通りです。
- 「流質期限」が3ヶ月と決まっている
- 多くの人が数日~1ヶ月程度で完済する
ということです。流質期限というのは、「この期間で完済できなかったら、預かっている品物を質流れにする」というもの。つまり質屋がリサイクルショップのように引き取る…ということですね。
で、当然みんな質流れは嫌なので、3ヶ月以内に返済します。なので、これだかけ金利でも、カードローンやキャッシングほどの「借金地獄」にはならないのです。
質流れ品を手放して終わり
質屋とカードローン・キャッシングが決定的に違うのは、「いつまでも返済が続かない」ということ。3ヶ月で完済できなかったら、そこでもう「返済が終わる」んですね。
ブランド品などのアイテムはもう返ってこないですが、代わりに返済義務も終わるのです。だから、高い金利でも破産者が出ることがない、ということです。
そして、質屋は消費者金融などと違い、「物品の管理コスト」があります。それも考慮すると、消費者金融などと同じ最高金利では、到底経営が成り立たないんですね。
現在でもすでに成り立たなくなり、質屋はどんどん閉店・廃業に追いやられています。ということを考えると、質屋はこの金利でもOKなのです。
「偽装質屋」が横行する理由
実はこの「質屋の金利は合法的に高い」という点に、闇金業者が注目し、「偽装質屋」という新たな詐欺ビジネスが始まっています。偽装質屋の内容は下の通りです。
- 全然価値のないアイテムを預かる
- そして、上限金利の109.5%でお金を貸す
- 流質期限(3ヶ月)が来ても、返済が終わらない
- (本当の質屋なら、ここで終わる)
- その後も普通の消費者金融のように、返済を求める
ということです。偽装質屋が違法なのは、この「流質期限を無視している」という点。質屋が109.5%という高金利を認められているのは、あくまで「流質期限を守る」という条件の上です。
(これは、質屋営業法などで制定されています)
これを破っている時点で、質屋というのは名ばかりで、「ただの闇金業者・違法業者」なんですね。
質屋であれば、高金利を取っていてもわかりにくい…ということで、彼らはこのビジネスを始めたわけです。偽装質屋の実態については、NHKのクローズアップ現代などでも報道され、最近徐々に知られるようになっています。
個人間でも、お金の貸し借りはしない方がいい
結局、この109.5%という上限金利があってもなくても、個人間のお金の貸し借りは、あまりしない方がいいでしょう。理由は―。
- 金の切れ目が縁の切れ目
- そもそも、お金を借りる時点で、自分の生活を見直した方がいい
- 人間は、お金を使うより稼ぐ方がいい
ということです。「金の切れ目が縁の切れ目」は有名なことわざなので、知っている人も多いでしょう。大体、お金で困って、人にお金を借りようとすると、その時点で多くの人間関係が終わってしまうものです。
もちろん、助けてくれる人もいるでしょうし、どうしてもそれ以外の方法がない…という場面もあるでしょう。
しかし、ほとんどの人のお金を借りる理由・状況というのは、そうではないはずです。ギャンブルや遊興費などの「まともでない理由」によって、友達にまでお金を借りにいく…というのが代表的なパターンでしょう。
とにかく、友達からお金を借りるというのは最低限&最後の手段として、もし身近な人から借りるなら、まず家族から借りる方がいいでしょう。