カードローンのルール

カードローン等の貸金業法はなぜ改正されたのか? ~ただの『消費者金融いじめ』?~

オフィス街のビジネスマン

2006年の貸金業法改正は、なぜ行われたのか―。一応の理由は「多重債務者を出さないため」でしたが、多くの批判があります。

  • 過払い金の返還によって、弁護士を儲けさせるためではないか
  • 銀行に屈せずに儲けている、アイフルや武富士を、銀行系の既得権益者たちが潰したかっただけではないか

…という指摘ですね。このような批判に対し、当時行政官として新法の設計に関わった大森泰人氏(金融庁・前信用制度参事官)の主張をまとめさせていただきます。

*参考文献…『理解されないビジネスモデル 消費者金融』(藤沢久美・片野佐保・真水美佳・川島直子/時事通信出版局/2008年)P.154~P.164

「貸し手」を規制するしかなかった

まず、大森氏は「業者だけが悪かったわけではない、というのは百も承知」とされています。

  • 業者も悪かった
  • 借り手も悪かった

というのが大前提です。で、「短期間で効果を出すには、どっちを規制すればいいか」「あるいは、両方規制できるのか」と考えたわけですね。

で、それぞれ「何が悪かったのか」と考えると―。

  • 業者…利益の拡大のために「とにかく貸しつけた」
  • 借り手…頭が悪かった(リテラシーが低かった)

…ということです。「頭が悪かった」というのは私の表現ですが「借りる必要もないお金を借りていた」というのは、要するにそういうことです。

で、この両者を比較した時、どっちが「短期間」で、「国が」規制できるかを考えたわけです。となれば、当然「業者」の方でしょう。

  • 利益のために、「ダメな人」にも貸している
  • だったら「利益が出ない」ようにすればいい
  • そうすれば、彼らは自主的に「ダメな人」に貸さなくなる

…ということです。「利益が出ないように」というのは「上限金利の引き下げ」のことです。

狙い通り、業者は「ダメな人」に融資しなくなった

で、この大森氏らの狙いどおり、キャッシング業者は「ダメな人」には融資しなくなったのです。で、「借りられない人」が市場に一気に増えました。これを―。

  • 1.規制によって、市場の活力を奪った
  • 2.消費者金融だけがダメージを受け、銀行が不当に有利になった
  • 3.「借りられない人」が、ヤミ金で借りるようになった

…と批判する声が大きくなりました(2015年現在もこの批判は続いています)。で、大森氏のこれに対する回答を、3つそれぞれ分けてまとめます。

1.規制によって市場の活力を奪った

これについての大森氏の見方は―。

  • そもそも、「市場の活力」を奪うつもりだった(信用収縮を起こすつもりだった)
  • 消費者金融は「必要以上に」活性化していた(必要ない人にまで融資していた)
  • だから、狙い通りである

ということです。私はこれを読んだ時「お役所の方でも、随分思い切った発想・発言をされるのだな」と、俗な言い方をすると「見直し」ました。「信用収縮が起きた」と批判する人に対し、「そもそも、信用収縮を起こすためにやった」と断言されているわけです。非常に「いさぎよい」と感じました。

私の言葉で超訳しているので、一応原文も引用させていただきます。

(引用開始)改革の副作用としての「信用収縮」を懸念する声を聞きますが、そもそも今回の改革というのは信用収縮を起こすための改革であって、借りてはいけない人が借りてしまっている現状を問題視したところから始まっています。

…というのが原文です(太字は筆者による)。

で、次に2番目の批判として―。

  • 消費者金融だけを締め付けた
  • 銀行だけが有利になった

…というものがあります。「業界地図をわざと塗り替えた」という表現もされますが、これについては、下のように答えています。

2.業界地図を不当に塗り替えた

これも主張をまとめると、下のようになります。

  • 消費者金融の経営が苦しくなるのは、承知の上だった
  • 今回の最優先事項は「多重債務者を、これ以上出さない」ことだった
  • そのために、この方法が一番だと考えた
  • それによって、消費者金融の経営や業界地図が変わる…ということは
  • ざっくばらんに言うと「関係なかった」

…ということです。これも私の超訳なので、原文を引用させていただきます。

(前略)制度を設計するときには、「借り手が多重債務に陥らないためには、貸し手の貸し方はどうあるべきか」という観点からのみ行っているのであって、その結果、貸し手の経営がどうなるかとか、業界地図がどう変わるのかということは、考えません。
(『理解されないビジネスモデル 消費者金融』P.158)

この引用を読んでいただくと、原文でもかなりハッキリと言い切っていることがわかるでしょう。これは別に―。

  • 「大森氏らが非情だった」とか
  • 「一つの課題だけ考え、全体を見ていない」

…ということではありません。そもそも金融庁自体が「こういう決断をするために生まれた」組織なのです。

大蔵省の「業者行政」への批判として、金融庁は生まれた

金融庁はそもそも大蔵省の「業者行政」への批判として生まれたという経緯を持っています。つまり―。

  • 特定の業界や企業に配慮して
  • 必要な改革を実行できない
  • 大蔵省を批判する存在として生まれた

ということです。この精神から考えると―。

  • 「消費者金融だけが不当に不利になる」とか
  • 「銀行だけが有利になる」ということは
  • 「考えてはいけない」

…ということです。「どっちが有利になろうと、不利になろうと、無視」しなければいけないんですね。

それでも、誰かが不利になるなら「横暴」では?

もちろん、その通りです。それは大森氏も書いていて、主張をまとめると―。

  • 確かに、それでは偏っている
  • だから、立法府(国会)が最終的に決める
  • そして、立法府は「ゴーサイン」を出した(法律が決定した)
  • つまり、立法府も「同じ考え」だった

…ということです。ここでも氏の主張は筋が通っています。大森氏の主張というより―。

  • 日本が「三権分立」の国であり
  • 三権分立のルール通り動いた

…ということなんですね。三権分立というのは―。

  • 立法
  • 行政
  • 司法

のことですが、今回の改正の場合―。

  • 行政…大森氏ら金融庁のメンバー
  • 立法…改正案を通した、国会

…となります。ちなみに「司法」は、この法律の成立後「これは憲法違反ではないか」などの裁判を受け付ける、裁判所です。(事実、ユニワードなどの廃業に追いやられた中堅消費者金融が、「国を」訴えています)

ユニワードが国を訴えたことも含め、こうして「三権」がそれぞれ動いているというのは良いことです。

…という「その後に訴える自由が保証されている」ということも含め、大森氏ら金融庁が「業界地図が塗り替わることになっても、それは関係ない」としたことは、間違っていないのです。

(終わった後に訴える自由がなかったりしたら、それは間違っていますけどね)

3.「借りられない人」が、ヤミ金で借りるようになった

これが3つ目の批判で、これは実際数字でそのようになっています。貸金業法の改正によって、ヤミ金融の利用者は増えたというのが、多くの統計でわかっていますし、専門家もそれを強く指摘しています。

たとえば、慶応大学教授の小林節氏の著書『国家権力の反乱』(小林節/2008年/日新報道)も、サブタイトルが「新貸金業法は、ヤミ金を利するだけではないか」となっているくらい、全編を通してそれが指摘されています。

(データはここでは省略します)

で、これについては大森氏の認められています。氏の主張をまとめると、下のようになります。

そもそも「多重債務者」を出さないのが第一

  • ヤミ金融が狙うのは「多重債務者」である
  • だから、そもそも「多重債務者を出さなければ」いい
  • 今まで消費者金融がむやみに貸し付けてきた分
  • 一時的に「借りられない多重債務者」は、確かにあふれる
  • その人たちがヤミ金に走ることは、確かにあるだろう
  • ただ、それはあくまで「これまでのツケ」であり、「一時的な現象」である

…ということです。後半4行については私の意訳というか解釈で、大森氏の言葉を引用すると―。

それでも「ヤミ金融が狙う多重債務者そのものを新たに発生させない」という目的の方が上位にあるだろう

…となります。で、そうやって「金融庁が対策をとっても」「これまでに消費者金融が発生させた多重債務者」は、現時点ですでに出ているということで「それについては責任が取れない」…と私は考えました。

(大森氏が言われていることも、そういうことかと思います。ということで、上の意訳をさせていただきました)

警察による規制を強化し「逮捕」によって減らしていく

ヤミ金に限らず、何かを「退治」する時には「2つの方法」があります。

  • 「本体」を叩く
  • 「栄養」を断つ

ということです。たとえば「ゴキブリ退治」の場合は―。

  • ゴキブリ自体を殺す…ゴキブリホイホイ・殺虫剤
  • ゴキブリの餌をなくす…台所を清潔にする

…という2つの方法があるわけですね。そして、「多重債務者を発生させない」というのはヤミ金融の「栄養」を断つということです。

そして、それだけだと当面は足りないので、もう一つの方法として「ヤミ金を直接逮捕する」というのも、力を入れていく…ということですね。実際、改正貸金業法の施行後、警察によるヤミ金の検挙数は―。

  • 改正直後に急増
  • その後、順調に減少

となりました。これはつまり―。

  • 直後に厳しく取り締まり
  • それによって、多くのヤミ金融が廃業し
  • 検挙数自体も少なくなっていった

…ということです。実際、『闇金ウシジマくん』を読んでも「ヤミ金融が警察の取り締まりを逃れるのは、意外と大変」ということがわかります。

ということで「ヤミ金被害が増える」という指摘に対する大森氏の答えは―。

  • 彼らの「栄養」となる、多重債務者を減らすのが最優先
  • その上で、彼ら本体も「警察」によって叩いていく

…となります。その効果は、一応一定レベルであがっているようです。(この問題については、まだ完全ではないと自分は思っています)


以上、「貸金業法はなぜ改正されたのか」「本当に正しかったのか」という議論について、前・信用制度参事官だった、大森泰人氏の主張をまとめさせていただきました。大森氏の主張は―。

  • 「貸金業法は政府の陰謀だったのではないか」
  • 「キャッシング業者を締め付けて、銀行を有利にするためだったのではないか」

…と疑っている方に、ぜひ読んでいただきたいです。

(実は、私自身もそう思って批判的に読み始めたので、読んだ後少々反省したものです)

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